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君だけでいい



「ほら。暗くなって閉じこもってたら腐んぞ」

「………ん」


…気を使わせてしまった。

これからは、しっかりしなきゃ。
ただでさえ迷惑かけてるのに、こいつを疲れさせてしまう。


「余計な事考えてんじゃねーぞ。おまえらしくねぇ」

「……うん」


促されて、財布と手渡された合鍵を入れたエコバックを持って家を出た。


いつも学校には直行直帰だったために、この周辺の地理がわからなかったので、きょろきょろしながら陽介の隣を歩く。


「海岸沿いなんだね」

「海好きだろ?」

「そりゃーもう!」


ちょうど夕暮れ時。

海岸沿いの直線道路が夕日で赤く染まって、とても見事なコントラストをつくっていた。


「ちょっと降りたいな」


砂浜へ続く階段を発見した俺は誘惑に負けて、足を止めて隣を見上げた。


「ああ」


陽介はやっぱりな、ってちょっと笑って、俺の左の肘を支えて短い階段をゆっくり降り始める。


「大丈夫だって。ご老人じゃないんだから」


俺を支えて慎重に歩く陽介の、ヘルパーさん並の介護っぷりに、苦笑が洩れた。




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