君だけでいい
◇
「そう」
下から数えてみると5階建てで、デザイナーズマンションみたいにお洒落。
…しかも新築っぽい。
想像してた安アパートとはまるで違ってる。
「うわ。すっご……」
しかもこの距離なら、学校に徒歩でも通えそうだし。
オートロックを開け、エレベーターで最上階に着くと、一番奥の角部屋の前で陽介が立ち止まった。
といっても部屋数が4つしかないので、全てが角部屋ってことになるけど。
「…家賃高そうだな」
…母さん、ここの家賃も仕送りしてくれるのかな?
何気にふと呟いて、母さんの『立て替えた金をちゃんと返せ』という言葉を思い出した。
「そういえば!立て替えって何!?」
「ここの初期費用」
「え!?全額俺もち?」
「それが条件」
…何も言わずに全てを受け入れてくれたと思っていた母の、内なる静かな怒りをひしひしと感じる。
でも俺が金を支払うことになるなら、幾ら同居するにしたって一言相談して安い木造コーポにでもして欲しかった。
果たして50万で足りるんだろうか?
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