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君だけでいい
Sweet Home


新居予定地は俺の通っている聖陵高校にほど近いとのことだったので、俺たちは駅前でタクシーを降りた。


俺の高校は、ここから電車で約1時間。
そして更にバスに乗って、20分の距離。

…区外どころか、完全に隣の県だ。


毎日見慣れていた、いつもの下り1時間コースを電車で辿っている間。

窓から外を眺めながら、しばらくこの風景も見られなくなるのかな、なんてふと考えたら、唐突にまた心に暗い影が差してしまった。

目に焼き付けておこうとしていた景色も、みるみるぼやけてその輪郭を無くしていく。


――なんだか、逃げ出すみたいだ。


あいつを頼むと言った、平澤さんの言葉から。

要さんがぽつりと洩らした「責任」から。

彼女に迫られた決断から。


突き放したのは彼のほうだからと理由をつけて、楽な方へ逃げようとしている。

実際、仁志さんに自ら会いに行くこともせずに、一緒にいて一番楽な相手に甘えて…俺は彼のいる街を離れた。


あの別れからずっと、側にいさせて欲しいと今度こそ真摯に訴えれば許してもらえるかも、なんて虫のいい事を考えていたくせに。





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あきゅろす。
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