君だけでいい
愛しのローラ
「そうだよ、天使だ!」
さっきからもやもやしていた引っ掛かりがとれたのが嬉しくて、陽介の手を引っ張って防音室を飛び出した。
走って居間に駆け込み、TV台の下の棚を漁る。
「どうしたの?マサキ。今おやつ持って行こうと…」
「いいから!」
夢中になって、ガチャガチャとディスクを漁って散らかした。
「…あった!」
目的のものを発見して、早速DVDデッキにセットする。
「また観るの?ほんとに好きねぇ、それ」
「あらー、何かしら?」
俺は入り口に立ったままの陽介の手を引いて、TVの前に並んで座らせた。
「みてろよー?」
「………」
陽介は戸惑っているみたいだったが、そんなのは気にしない。
リモコンでCMとタイトルを早送りし、物語の初めで再生ボタンを押した。
「ほらこれ!ローラだよローラ!」
天使の格好をした、ふわふわして綺麗な女の子の物憂げなアップが画面に写し出される。
「ねーお母さん!コイツこれに似てるよね?」
「こらマサキ!コイツとかこれとか…あら、そっくり」
「かわいーい!ほんとねぇ」
母親達の同意が取れていい気になった俺は、益々興奮気味に陽介を指差した。
「おまえはローラだ!」
この映画は、内容はちょっと大人向けだったけれど、映像の綺麗さと主人公である天使の女の子の可愛さで、当時の子供達の間で人気が出た外国のファンタジー映画だった。
…陽介と百合子さんは知らなかったみたいだけど。
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