君だけでいい
◇
そして――
「ああっ!」
俺の背中にのし掛かって、片足と手を使って右腕をガッチリ固定する。
「やめ…手だけはっ!」
「くっくっ…命乞いか?たまんねぇな」
心底愉快そうな笑い声。
「俺はな…この瞬間が一番…好きなんだよっ!」
腕を可動域と逆の方向にしならせたかと思うと、バキッ!と大きな音がして、経験したことのないような痛みが右腕に走った。
「ああああっ!」
――折れ…た……。
「ううっ…はぁ…はぁ…」
徐々に激しくなってくる痛みと熱が、右腕を襲ってくる。
意識すらもだんだん遠くなっていき、いっそ気絶してしまいたくても、それを許してはくれなかった。
「さーってと、そろそろ報告に行かねぇとな。これで俺もNo2だ」
「ううっ…」
河東は満足そうに俺から退いて、立ち上がった。
「おまえはもうちょいおとなしく寝てろよ?…といっても、動けねぇだろうけどな…ははははは!おい、ここ開けろ」
河東がガンガンと扉を蹴ると、外側からそれが開けられる。
そして電気が消され、真っ暗になった倉庫内にまで笑い声を響かせて、奴は消えた。
「う………」
怖い。痛い。悔しい。
――陽介…。
陽介…ごめん。
おまえが好きだったピアノ、もう聴かせてやれなくなっちゃったよ…。
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