君だけでいい
◇
「落ち着け。天野がどうした?」
両膝に手を当てて息を切らせている1年に、平澤が冷静に尋ねた。
「拉致られました…!」
「……っ!」
陽介は弾かれたように勢いよく立ち上がった。
「で、おまえらは何してた?」
仁志が詰め寄り、報告した男の顎をガシッと掴む。
「すんません…でも相手がCHAOSのNo3で、俺らじゃとても…うっ!」
言い訳を並べ立てようと試みた1年は仁志の蹴りに吹き飛ばされ、フェンスにぶち当たって気を失った。
「この腰抜けが…!」
「ひっ……」
残り2人に早足で歩み寄ろうとした仁志を、平澤が制止した。
「待て拓海、そいつらの制裁は後だ。相手が河東なら…ヤバいことになる」
「くっ…」
河東はなんでもありの危険な男で、卑怯なやり方で強大なCHAOSのNo3にまで急速にのし上がった男だ。
「天野が危険だ」
「………」
その言葉にぴたっと動きを止めた仁志は、冷静な声で次々と命令を下した。
「…賢悟。俺に手を貸す奴を手当たり次第声かけて集めろ…ギャングでも族でも何でもいい」
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