君だけでいい
◇
「…やってくれたな」
仁志が屋上の地面に座る陽介を、射抜くような冷たい視線で見下ろす。
「おまえが派手に暴れたせいで、幹部が動いたぞ」
しかし陽介は横柄な態度で足を組み、小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「手っ取り早くて手間が省けたろ?」
「やめろ陽介!すんません仁志さん、やっぱ俺が…」
「どけ小田桐!」
反省のかけらも見られない台詞に、仁志の横に立っていた本城が激昂して陽介の胸ぐらを掴み、拳を振り上げた。
その時。
陽介の携帯電話の呼び出し音が鳴り、気をとられた本城の手が止まる。
「マサキちゃん…」
「…マサキ?」
画面を確認して呟くと、仁志が片眉を上げて反応した。
しかし電話に出る間もなく呼び出し音は切れてしまう。
――あれから、メールのひとつも寄越さなかったのに。何かあったのか?
「仁志さん!た…大変です…天野がっ!」
そこに屋上のドアが勢いよく開かれ、マサキの見張りに付けていた1年生の3人が飛び込んできた。
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