君だけでいい
◇
「ちっ、素早ぇな」
でも逃げてばかりはいられない。
倒さなきゃ…いけないんだ……。
厄介な警棒を蹴りで弾き飛ばして、相手の隙を見つけて渾身の攻撃を繰り出した。
――やった!
ハイキックが相手にクリーンヒットした。
「だが…それだけだ。期待外れだな」
精一杯の攻撃だったのに、河東はびくともしない。
「くっ…」
焦りと落胆を堪えて、また攻撃を避けながら蹴りを繰り出す。
当たりはするけど、上手く力が入らなくて殆ど効いてはいない。
「軽ぃんだ…よっ!」
疲労で動きが鈍くなってしまった身体に、河東の右の拳がめり込んだ。
「う……!!」
よれよれだった俺はいとも簡単に吹っ飛んで、床に転がってしまった。
もう…動けない。
息も出来ないほどの痛みを堪えるのと、胃の内容物を戻さないようにするだけで必死だ。
河東はそんな俺に近づき、頭の横で屈んだ。
「おいおまえ…なんで手を使わねぇ?」
「!!」
ヤバい…。
顔から一気に血の気が引いた。
「部活でもやってんのか?」
河東は狂気に満ちた目でにやにや笑いながら、俺をうつ伏せにして押さえつけた。
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