君だけでいい
深層心理
結局逃げ出す事も、誰かに知らせることもできないまま車は港に止まり、倉庫の並ぶ暗がりまでがっちり腕を掴まれて連行されてしまった。
「うっ!」
そして目的地に着いたとたん、倉庫の中に突き飛ばすように投げ込まれる。
「おめーらは外を見張ってろ」
「はい!」
扉が外側から閉められ、目つきの鋭い男と俺は二人きりになった。
「って…あんたは一体…」
コンクリの床に目一杯打ちつけてしまった肩に走る激痛を抑え、相手を睨み上げる。
「俺を知らないとは余裕だな。俺はCHAOSのNo3、河東 修司だ」
――カオス…最悪だ。
仁志さんと敵対してるギャングチーム…。
他にも仲間がいるんじゃないかと、慌てて周りを見渡した。
「今日はこっちにゃ誰もいねーぜ。本多さんは筋通して真っ向から戦争する、とか甘ぇこと言ってるからな。てめぇを人質にとったのは、俺だけの手柄だ」
――本多…CHAOSのトップの人だろうか?
河東は煙草に火を点け、壁に背をもたれた。
ジッポライターの大きな炎越しに、不気味な笑みが揺れる。
「人質って…」
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