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君だけでいい



「ああー!」


俺の携帯がっ!


携帯の行方を追って思わず窓から身を乗り出そうとすると、いきなり頬を殴りつけられた。


「つっ!」

「あんまり調子に乗ってんなよ?」


勢い余ってシートに深く倒れ込む。


「う……っ」


なんて重い拳…脳みそが揺れてる。
せっかく治ってきてたのに、口の中がまた切れてしまった。


「自分の手も汚さず葵と小田桐を使って敵を潰させてるらしいが」

「陽介と…哲司が…?」

「いつまでもそんなセコいマネが通用すると思うなよ」


そんな事…俺は知らない。


「特に葵はおまえを狙う奴を容赦なく叩き潰してるらしいからな。忠実な部下を持ったもんだ…奴とやり合うのが楽しみだぜ」


男は、恍惚とした危ない笑みを浮かべている。


――容赦なくって…何やってんだよ陽介!
いつも言ってるだろ?やり過ぎるなって。


大声で叫び出したくなった。

人がせっかく少しでも目立たせないように努力してたのに。


……ほんとに…本当に、馬鹿な奴。





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