君だけでいい
◇
「ああー!」
俺の携帯がっ!
携帯の行方を追って思わず窓から身を乗り出そうとすると、いきなり頬を殴りつけられた。
「つっ!」
「あんまり調子に乗ってんなよ?」
勢い余ってシートに深く倒れ込む。
「う……っ」
なんて重い拳…脳みそが揺れてる。
せっかく治ってきてたのに、口の中がまた切れてしまった。
「自分の手も汚さず葵と小田桐を使って敵を潰させてるらしいが」
「陽介と…哲司が…?」
「いつまでもそんなセコいマネが通用すると思うなよ」
そんな事…俺は知らない。
「特に葵はおまえを狙う奴を容赦なく叩き潰してるらしいからな。忠実な部下を持ったもんだ…奴とやり合うのが楽しみだぜ」
男は、恍惚とした危ない笑みを浮かべている。
――容赦なくって…何やってんだよ陽介!
いつも言ってるだろ?やり過ぎるなって。
大声で叫び出したくなった。
人がせっかく少しでも目立たせないように努力してたのに。
……ほんとに…本当に、馬鹿な奴。
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