君だけでいい
◇
――良かった、なにも起こらなくて…。
俺は周囲を気にしながら、人通りのない裏道を走ってコンビニに向かった。
そして順調に猫缶とドライフード、ついでに自分用の食料なんかも購入して、同じ道を辿って帰途に着く。
徐々に自宅マンションの建物が視界に入ってくるとつい油断して、のろのろと散歩気分にまでなってしまっていた。
「おい、待てよ」
「!!」
背後から低い男の声。
背中に冷たいものを感じ、素早く後ろを振り返る。
ヤバい…。
そこにはホスト風2人組と図体のでかい男。
皆、揃いの黒服上下を着ている。
――あの時の奴ら…!
しかも、やけに背が高くて均整のとれた体格の目つきの鋭い男を連れている。
…見るからに強そうな。
「間違いない、コイツっすよ」
「天野だな?」
問われた瞬間、俺は逃げ出していた。
「待てコラァ!」
すかさず怒声が追ってくる。
でも幸いこの辺の地理には自信があったので、適当に撒いてからマンションに帰ろう…なんて、まだ甘い事を考えていた。
そして思惑通り、追いかけてくる足音と叫び声はみるみる遠くなっていく。
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