君だけでいい
◇
平澤は「葵は小田桐と一緒に幹部叩きに参加させろ」と提案し、哲史も陽介と行動を共にする事を懇願したが、仁志は意に介さなかった。
それどころか、他のメンツはグループ行動で、陽介は単独で動くようにと命令され、余力があれば幹部叩きにも参加させると言われている。
この過度ともいえる作戦で致命傷を負うか、あわよくば死んで欲しいとすら思われているのかもしれない。
しかし、それは都合の良いことだった。
集団行動は性に合わないし、いつ死んだって構わない。
それに…身体を動かしていれば、ほんの一瞬でも嫌な事を忘れていられる。
消すことの出来ない喪失感と虚無感、そしてやり場のない怒り――
「…クソッ」
それでも下らない祭りが終われば、それらはすぐさま頭に浮かんできてしまう。
「おい」
陽介は、まだ呻いてたり命乞いを続けているCHAOSのメンバーの一人に近づいて屈み、乱暴に前髪を掴んで顔を上げさせた。
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