君だけでいい
◇
……笑った、んだろうか?
泣きそうなのに口だけ引き上げる、みたいな器用な顔をしている。
それは妙にぎこちなくアンバランスで、せっかくの可愛い顔が台無しになってしまった。
「あらまぁ、しっかりしててお利口さんね。陽介ちゃん、女の子みたいに可愛いわぁ。ほら、マサキもご挨拶して」
母の言葉に、冷水を浴びせられたみたいなショックを受けた。
――陽介?女の子みたい…?
まさか男!?嘘だろ!
動揺しつつも、教科書を読むような棒読みで挨拶を返す。
「…天野 真希です。よろしくお願いします」
「もーマサキ!この子ったら無愛想で。ごめんなさいね」
女優さんはにっこり微笑んでしゃがみ、俺と同じ目線になった。
「いいのよ。ね、マサキちゃん。陽介、マサキちゃんと同じ学校に行くのよ。これからよろしくね。同じクラスになれるといいけど」
同じクラスって、まさか同い年!?
こんなに小さくてガリガリなのに!
「こんなところで立ち話もなんだから、よかったら上がっていって」
「いいんですかー?ようちゃん、ちょっとお邪魔させてもらっちゃおうか」
そして母と女優さんは居間に移動し、俺と陽介は防音室に押し込められた。
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