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君だけでいい



防音室のインターホンが鳴ったのに気づいて、ピアノを弾く手を止めた。

椅子から降りて受話器を耳に当てる。


「はい」

「マサキ、ちょっと玄関にいらっしゃい」


と、母の声。


毎日4時間も義務づけられていたピアノの練習を中断されて助かった思いで玄関ホールまで出ていくと、そこにはテレビに出てる女優さんみたいに綺麗な女の人がいた。

さらに、その後ろに隠れるみたいにして、女の子が半分だけ顔を出している。


「ほらようちゃん、ご挨拶は?」


その子は女の人に押し出されて目の前に立ち、不安げに俺の顔をじっと見つめる。

色が白くて小さくて、猫みたいな目が印象的で。
とにかくお人形のように可愛い子だった。


――あれ?でもどこかで見たことがある。
どこでだっけ?誰だったっけ?


一生懸命思い出そうとしていると


「初めまして、葵 陽介です。よろしくお願いします!」


はきはきと元気一杯に言って、にこっと笑った。





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あきゅろす。
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