君だけでいい
トラウマ
「ママね、好きな人ができたの。今度こそ運命よ!」
またあたらしいパパができるの?
…ママのすきなひとは、ぼくだけじゃダメなの?
「これからママのお友達が来るから、ようちゃんお外で遊んでてね」
そうやっていうママのかおは、いつも、ちがう人みたい。
「聞いて、ようちゃん!お店のお客さんが海外旅行に連れていってくれるって」
また、おるすばん?
「ようちゃんは、皆の言うこと聞いて良い子にしてるのよ。最初の日はね、バイトのアヤちゃん」
いやだよママ。
そのひと、ぼくにさわってくるんだ。
すごく…いやなかんじがするんだ。
「次の日はお隣の木佐さん。美貴ちゃんに会えるし、ようちゃんも嬉しいでしょう?」
きささんはいつもぼくに、かわいそう、ってへんなかおしていう。
みきちゃんも、それをまねして。
ぼくのこと『ようちゃんはかわいそうな子』
だって。
みきちゃんだけじゃない。みんな。みんな。
「…うん!たのしみ」
泣きそうな僕を一度も見ないまま、大きな鞄に洋服を詰めながら、楽しそうに歌うように話し続ける。
――笑わなきゃ。
いつも笑ってなきゃ嫌われる。
置いていかないで…僕にはママしかいないのに。
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