愛戦士2-1
分かってたよ…
分かってたけど
それでもアンタの背中をアタシのものにしたい…
(愛戦士・2)
京一の事が好きってばれて早1週間。
『おや今日も遅刻ですか』
『…ここにいるアンタに言われたくない』
アタシ達は相変わらずこんな関係。今までと何ら変わりはないけど、逆にギクシャクしちゃうよりかは大分良い…
『乗るか』
『乗る』
始業のチャイムが遥か向こうで聞こえて、特に急ぐ気もないけど…寒い中歩くよりあったかい背中を抱き締める方が良い。
『くっつき過ぎだってのッ』
『色気作戦ッ』
んな訳ない…ようなあるような…京一の一言でやる気満々なアタシに恥じらいは全くない…と言うかアタシに恥じらいがあるのかも微妙だ
『ない胸くっつけんなっ』
『これは着痩せしてるだけですーッ』
実際そんなに大きい事もないし、着痩せとかまずないけど、ただ純粋に京一の温もりを感じたいからぎゅっと京一を抱き締めた
『そんなんじゃ俺は堕ちねェぞ』
『人生何があるか分かんないもん』
そう、例え1%でもアタシは奇跡に賭けてる。現に今、京一の背中を独り占めしてるのはアタシだもん。人生何があるか分かったモンじゃない
『どうも』
『いいえ』
後部座席から降りて、京一が自転車を止めるのを待つ。京一は京一でアタシの荷物と自分の薄っぺらい制鞄を持ってアタシの前に来るなり…
『最初はグー』
『は…』
一体何が起こったのか…京一の掛け声にアタシは条件反射で手を開けてしまい…京一はチョキ、アタシはパー。いや、やってる事の意味が良く分かんないんですけど…
『よっしゃっ…はい、荷物』
『はぁッ』
つまりアレよね、小学生が良くやるランドセル運びみたいな…ってか今時小学生でもやらないでしょ…
『下駄箱で交代な』
『アンタ今何歳よ』
京一はもしかしたら小学生なのかもしれない…とか有り得ない考えすら頭に浮かんだけど、仕方ないから京一の分の荷物とアタシの分の荷物を持って、さっさと歩き出すアタシ…
『じゃんけん…』
『はッ…ちょっ…まだ荷物置いてな…』
京一はパー、アタシはグー。ちょっと待って…これって卑怯って言うんだよ馬鹿京一…。アタシ今グーしか出せないじゃない…
『よっしゃッ、お前じゃんけん弱過ぎっ』
『ずっ…ずるいッ』
だって荷物持ったままなんてグーしか出せないし、確かにアタシはじゃんけん弱いけど…って何アタシはその気になってるんだ…
『あ〜楽チンだなァ〜』
『最低ッ』
本当に最低。京一の荷物持ちでしかないアタシも、京一に振り回されてるアタシも…
『はい、お疲れさん』
『下駄箱から教室までとか聞いてないしッ』
そんな事をやってたから、教室に着いたのは休み時間が始まった頃…。京一に荷物を渡して、肩で息をしながら疲れ切ったアタシの最大限の文句。
『だって…』
『何よ…』
ニヤニヤと笑いながら椅子に座る京一は満足気にこう言った
『言ってねェからなッ』
『最低ッ』
そうよ、京一はこう言う奴なのよ…
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