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華1






『ん〜…赤、白、桃…』


稽古帰りにたまたま見付けた鬼哭村に咲いた色とりどりの華。

それを大切なあの方にあげたくて…









『御屋形様の髪色なら紅…でも紅に合うのは白…個人的には桃…』


花の事は詳しくは知らないが、滅多と見ない珍しい花であったので、なまえはこの花を一輪だけ天戒に持ち帰りたいと考えていた


『御屋形様、どの色が好きなんだろ…』


3色の花が何本も生えている中から天戒の好みを想像するも、人に何か贈り物をする時は中々決まらないものである


『あぁ…早く決めないと日が暮れちゃうし、夕餉の時間に間に合わない…!』


焦って何本か掴もうとしたが、気に入って貰えなかったら…そう考えると、やはり花を掴む力は弱まった


『それ程真剣な顔をして、どうしたのだ?』


『あ…お、御屋形様っ!!』


振り返ると紅蓮の紅髪…
それは夕日に照らされ更に紅く染まる。


九角 天形
九角家当主であり、鬼道衆の頭領である。
鬼道を力とし、徳川幕府に虐げられた者を集め、幕府に復讐したいと願う者を集め、鬼哭村を創った


『すまんな…驚かせてしまったか?見回りをしていたらなまえの姿を見付けたのでな』


『あ…いえ…その…』


腕組みをして少し申し訳なさそうな顔をしてなまえに笑い掛ける。その顔は穏やかで、とてもではないが、《鬼》とは程遠い顔をしている。


『あの…御屋形様は、何色が好きですか?』


『ふむ…そうだな…』


天戒は近くの切り蕪に腰を降ろし、なまえの質問に答えようと考える。その隣に遠慮がちになまえも腰を降ろした


『特にこれと言ってはないのだが…嫌いな色も無いな。強いて言うなら季節に合った色が好き、と言った所か?』

『そうなんですか…?う〜ん…』

天戒の曖昧な返事に再び頭を悩ませる。


『余程悩んでいるみたいだが、色がどうかしたのか?』


『え?えっと…』


ここで真実を伝えてしまうのも悪くは無いが、夕餉が終わった後に渡しに行きたいと考えていたなまえは、ここで伝えてしまうのは何だか勿体無い気がした


『大切な方に…お花をあげたいんです。高価な物ではないのですが…』


なまえの話に天戒は黙って耳を傾ける。


『珍しい花なのできっと…喜んで頂けると思うんです…あ、でもとても優しい方なので嬉しくなくても喜んでるふりかもしれませんが…』


『そうか…』


嬉しそうにその人の話をしたかと思えば苦笑いを浮かべ、少し悲しそうな顔をする…


話の人が一体誰なのかは分からないが、天戒は少しでもなまえの力になってやりたいと思っていた

















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