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華2









『きっとなまえが想う相手は喜んでくれると思うぞ?そう言うのは気持ちが大切なのだからな』


『ほ、本当に…?』


なまえが花を渡したい本人の天戒がそう言うのだから信じても良いのだろうが、やはり少しは不安がある


『あぁ。相手を想う気持ちが大切なのだ。なまえが好きな色の花をやると良い。きっと…否、必ず喜んでくれるだろう』


そう言ってなまえの頭を撫でる。なまえは天戒の大きな手が大好きである。


『私が…好きな色…』


自分が好きな色…
なまえは今一度後ろの花を振り返り、今度は迷う事なく、その花を一輪だけ摘み取った


『さて、そろそろ夕餉の時刻だ…帰るとしよう。』


『あ、あの…御屋形様っ…』


立ち上がった天戒になまえは勇気を出して呼び止めた


『…?どうしたのだ?』


『これ…御屋形様に…』


そう言って差し出したのは美しく咲いた桃色の花。なまえの好きな色を…、天戒が言ってくれたお陰でなまえは色を決める事が出来た


『紅は御屋形様の髪の色で、白は御屋形様の髪色に似合うし、桃は私の好きな色だから…凄く迷ったのですが…御屋形様が言ってくれたから…』


夕日の紅い色も手伝ってか、なまえの頬を紅く染め、俯き加減に花を差し出す


『そうか…なまえは俺にくれようとしていたのか…』


『は、はい…あ…め、迷惑…でしたか?』


今更ながら天戒の迷惑も考えずに花を差し出してしまったが、もしかしたら天戒は花自体嫌いなのかもしれない…


『桃色か…なまえだと思って有り難く受け取っておこう』


『御屋形様…』


そう言われる事がとても嬉しくて、なまえは満面の笑みを浮かべた。


『…なまえよ、少し瞳を閉じるが良い』


『え?あ、はい…?』



なまえが瞳を閉じると、天戒の大きく暖かい掌がなまえの髪を優しく撫でた


『よし、もう良いぞ?』


『お…御屋形様…これ…』


天戒の手によってなまえの頭に飾られた一輪の花…その色は、紅。


『うむ。良く似合っておるぞ?…その花を俺だと思って大切にしてはくれぬか…?』


『も、勿論です!大切にします!』


天戒からの意外な贈り物になまえは思いの外喜んで、頭に咲いた紅に愛おしそうに触れた


『そうか…それは良かった。さて、そろそろ屋敷に戻らんと澳継に怒られてしまうな』


『あ、はい!』


私が紅の花を頭に飾って、御屋形様が桃の花を手に持って現れたら皆はどんな顔をするだろうか…


少し…ほんの少しだけ…
天戒を独り占め出来た様な気がして、なまえは天戒の少し後ろを歩く



隣を歩くのは今は無理だけど、いつか…いつか隣を歩けたら良い…。


いつか…御屋形様の隣を歩けますように…



そう、紅い花に願を込めた












060911めぐ
121103編集




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