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Wingless‥(連載中)
なな


 額にひんやりとした感触を感じ、目覚めた。

 熱に熱に浮かされ微睡む内に、どうやら何時の間にか眠ってしまっていたようだ。
 どの位眠っていたのだろうか?

 目を開けると、淡い灯りの下でエドワードが、手付かずの儘のオートミールを片付けているところだった。
 怠さも手伝って、私はエドワードに声を掛けるのを拒み、再び目を閉じた。

 エドワードが発した、かちゃんと皿とスプーンが重なる小さな音を聴きながら、薄れゆく意識の中へ、私は再び落ちていく。


 先程と違うのは、夢を見た事だ。

 後、何度見れば気が済むのか──。

 幾度となく繰り返される、悪夢。


 鼻腔に嗅ぎ慣れた血の匂いを感じる。

 土が赤に染まる、地獄絵図。

 私は震える指先に力を込め、発火布を摺り合わせる。

 私が思い描く通りに火花が空中を走り抜け、目標の目の前で弾け爆発を起こす。

 人間が焼ける臭いが鼻に衝く。
 罪も、怨みもないましてや顔も名前すら知らない人間を自らの手で殺してしまった罪悪感に苛まれ、激しい嘔吐感にその場で跪き込み上げる儘に胃酸を吐き出し喘いだ。




 ── そうして、私が動けないうちに、彼等は動き出すのだ。

 確かに殺した筈の人間が目の前で亡者と化し、蠢く。

 それを認めた私は走り逃げ惑う。
 もつれる足で逃げて、逃げて、逃げて。

 不思議な事に鈍重な筈の死者達は、驚愕の速さで私を追い、気付けば私は追い詰められ袋小路に立たされ、振り向くと幾千幾万の死人に囲まれて居るのだ。


 ──何度も繰り返し見ている内に、これは夢なのだと理解出来る様になる。

 冷静にストーリーを語れるのに、それでも私の脳は恐怖で支配されるのだ。



「わ──私が悪かった。私は、……!
どうか、どうか……そんな目で私を見ないでくれ…ッ!」

 行き止まりの末端で、逃げ場を無くし屈み込み譫言の様に繰り返す言葉を、彼等は聞こえていないかの如く、虚ろな感情の無い眸で無視し、私の四肢を喰い千切る。

「う、あぁあああああぁぁぁぁぁ───!」


 夢の中で激痛に叫ぶ自分の声と、現実の呻きが重なり合い、覚醒する。

 眠った時と同じくエルリック家のベッドの上で飛び起きた私は、喰われた手が無事なのを確認するとガクガクと情けなく震えを止めない自らの躰を抑え付けた。

 夢なのだと、言い聞かせる。


 何時間眠ったか解らない。
 闇を月明かりが照らしていた。


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あきゅろす。
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