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Wingless‥(連載中)
さん


「あんた達、最近こそこそと何やってんのよ?」

「ウィンリィには、関係無いだろ」

「…!!
私には話せないって訳!!??」





 甲高い声に、どろどろとした微睡みから引き摺り出され、私は無意識に視線だけを動かし、不愉快な声の主を捜した。
 あれは、私の生徒の………、ウィンリィ・ロックベルと、エルリック兄弟か………。

 私は河原で寝込んでしまっていたらしく、まだ、日中は暖かいとはいえ、夕刻を迎えていた秋の気候は、私の身体を芯から冷すには、充分だった。



「ハッ・・、ハァックション!!」


 どうやら、風邪を引いてしまったようだ。
 豪快なくしゃみで、私の存在に気付いたらしい、エドワードと眼が合った。
 他の2人は、討論に夢中らしく、立ち止まったエドワードにも気付かず、先に行ってしまっていた。

 ふむ…、私は彼に随分と嫌われているらしい。
 容赦なく、睨み付けてくる彼の視線が、些か煩わしくもあったが、相手は仮にも、教え子だ。
 邪険にも扱えない。

 だが、先に無礼を働いたのは、彼の方だ。
 厭味のひとつ位言ったとて、罰は当らないだろう。


「やあ、エドワード君。
授業を抜け出して、いったい何を?」


 にこやか微笑みを向けつつ、立ち上がり、ズボンの土埃を掃い涼やかに訊ねる。

「あんたには、関係ないだろ?」

 彼の答えは案の定、可愛げの欠片も無いものだった。

「関係ない…か…、教師に向かってその口の利き方はないだろう?」

「あんたさ、厭々教師やってんのバレバレで、ムカつくんだよ。
あんたの念仏みたいな授業に付き合ってる暇なんて、ねぇ」











 ………!!










「……、それで? 人体練成の研究に勤しんでいると………?」



 唇を大人の厭らしさで歪ませ、この、美しい金の瞳を持つ、少年の一番踏み込まれたくないであろう、タブーに遠慮無く、土足で踏み付けてやった。

 その証拠に先程までの威勢の良さはすっかり影を潜めてしまっていた。



「…………あんた…………、あの僅かな資料でオレ達が、何を研究してるか、解ったって言うのか……?」



 俯き、両手をきつく握り締め、唸る様な、悔しそうな声を出す。











 私は何て滑稽なのだろう…。

 こんな子供に見破られたくらいで、動揺し、我を忘れてしまうとは…。


 だから、私は、こんな所で、ただただ、生活をせんが為だけの仕事をし、ただ、生きているだけの、錆びれ、堕ちて行くだけの無様な様を晒し………






 なぜ、私は生きているのか………?











 ………あの時、死んでいたら………
 どれだけ幸福せだっただろう…………




















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