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君を想う。(MM配信中)



 あの日からアルは毎日病室を訪れた。
 それがオレの精神安定剤となり、今までの様に暴れる様な事もなく、病院側もそんなオレに安心した様子だった。

 然し今日はアルの到着が遅い。何時も遅くても十時には着いているのに。

 昨日、何も言ってなかったし、別に変わった様子も見られなかった。

 忙しくて来れないのか?

 窓の外は春の気配を見せ、青空が深く、とても暖かそうだった。
 様子を見に来た看護婦に頼み窓を開けて貰うと、冷たい空気が部屋を駆けた。ブルッとひとつ身震いした。
 まだ、風は冷たいんだな。


「今日はアルフォンスくん遅いのね」
「え? ──あ、」

 看護婦の言葉に注意をとられ、リハビリだと言われ渡された柔らかなボールを左手から落としてしまった。
 何時もなら直ぐにアルが取ってくれる蛍光の黄緑色のボールは一度だけ小さく弾み、そのままころころと音もなく病室を出ていってしまった。

 廊下の壁に跳ね返り、漸く止まったボールを通行人が拾う。
 その人物を視た瞬間。
 心臓がドクンと波打ったのを感じた。

 相手は黙っている。

 オレを視て、黙っている。


「────。」

「──あんた、誰?」

 堪えられず声を掛けた。
 だって、そいつがひどく懐かしいひとだと感じたから。


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