君を想う。(MM配信中)
2
無機質な銀の手と、柔らかな肌色の手をオレはずっと長い事見比べていた。
痺れの様な麻痺した痛みが、オレの…体の自由を奪っていた。
さっき、何時もの様に定時にやって来た医師に訴えると、何れその感覚は消えると、無表情に告げた。
貴方の神経は、もう何も感じたりはしない。
そう、遠回しに告げている。
動かない、重りと化した機械鎧と。
さっきから何度も『動け』と言う脳からのシグナルを無視し続ける、生身の手。
どちらも、もうオレの役に立ちはしない。
オレは何処の誰で、何を考えていたのか。どう生きてきたのか。誰を愛していたのか。
──‥‥この付け根から‥‥
ど…ん‥な…‥‥
足が‥‥はえていたか‥‥‥‥‥、など‥‥。
名前すら……忘れてしまった。
運ばれて来た食事を、看護婦がオレの口に運ぶ。
看護婦が食事の世話をしながら、色々話し掛けてきたけど、オレは応えなかった。
その上から物を言う様な喋り方が気に触ったのだと解釈する。
「あらあら、口が汚れちゃったわね」
そう言ってガーゼで口元を拭う。
オレは、自分で食事すら出来ない───!
苛々する‥‥。
「焦る事はない。
何れ自然に思い出すことだってあるのだから‥‥焦りは禁物だ」
何れ‥‥…何れ……‥
何れ――?
"イズレ"って"イツ"だ?
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!