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君を想う。(MM配信中)
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「けど、もう暫くはこのままで良いかもね」
「は?」

 朗らかな笑顔でとんでもない事を口にするアルを見た。
 信じられない。アルはなんて薄情なんだろう。そう思った。
 視線から感情を読み取ったんだろうアルは目が合った途端我に返ったって感じで慌てて弁解した。

「や…! 違うよ。兄さんッ
そういうつもりじゃなくて…!」
「いや、アルの気持ちはよ〜く解った」
「ち‥違うってば〜」
「たくっ、他人事だと思って…」
「ホントに違うんだってば」

 不貞腐れてぼやくオレに必死に弁解するアル。慌てふためくアルを認めてもそれで機嫌なんて直る訳が無い。

 オレの沈む気持ちとは裏腹に、風は涼やかで、オレの髪を弄ぶ。
 アルにゆっくりと押される車椅子に依ってゆっくりと移動する車椅子に運ばれ、景色もゆっくりと移り変わる。
 アルは少しだけ車椅子を押す速度を速め、意を決しオレに告げた。

「本当に違うんだ」

 弁解を繰り返すアルの声色は、今度は酷く低くてオレは口を挟むのが拒まれる。
 だから、オレはアルが言葉を紡ぐのを静かに聴いていた。

「こうして兄さんの傍に居られるのが‥‥只、幸せなんだ」

 アルの気持ちは伝わったが、疑問が湧いた。
 アルは、ずっと二人で旅をしてきたって言っていた。
 なのに、『傍に居られるのが幸せ』だなんて……矛盾してないか?

 けど、オレが感じていた誤解はそんな矛盾よりもアルの気持ちが真っ直ぐに伝わる言葉により溶かされてしまった。
 なんて単純なんだろう?

 けど、アルは俺にとって『弟』以上の存在だと感じる今、オレはそれを素直に受け止めた。

 弟では無いなら、一体何?
 恋人、想い人、………友人。将又親友。

 関係は、感情は色々あるけれど、オレの胸に静かに宿るのはそんな単純なものじゃない。きっと。
 確信なんて無いけれど、確かにそう、確かに ───。
 オレの胸の内はざわめいた。

 アルが大切だと───。


 それが何か……解らない。
 けど、確信に近い予感。

 アルが大切だという、今一番確かな感情にオレは素直に従った。

「フッ、まぁ、取り敢えず信じてやるよ。
他でもない、アルの言う事だしな」

 苦笑いで告げれば、アルは安堵した笑みを浮かべた。

 うん、オレはこの笑顔を見ていたい。



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