金
2.
―…チンッ
受話器を置くと、ホークアイ中尉は、こちらを静かに振り返る。
ホークアイ中尉の顔は、私に良からぬ知らせを想像させ…手が震えた。
それを隠すために、もう片方の手で押さえ付け、震えを止める。
「エドワード君が…」
そこまで口にすると、ホークアイ中尉は俯いた。
――――――?
「エドワード!? エドワードがなんだと言うんだっ!!!」
「―――キャ…!」
思わず中尉に詰め寄る。
男に加減なく鷲掴みにされた中尉は、デスクに腰を強かに打ち付けられ、痛みに小さな悲鳴を上げた。
「…すまん」
ホークアイ中尉を解放し、冷静さを取り戻そうと、私は頭を抱える。
「……平気です」
ホークアイ中尉は衣服の乱れを正し、体勢を立て直すと私の目を見て言った。
義務的な軍人の声で………。
「……東部でエドワード君の物と思しき遺体が発見されたそうです…」
中尉の態度から薄々は感じていた。
何故か――そんな事を聞いた直後なのに私の思考回路は回っていた、いや、いつもより冴えているようにさえ感じる。
私はエドワードに逢いに、直ぐに東部へと向かった。
棺にすっぽりと収まる愛しい人の姿。
エドワードの蒼白い頬に触れ、金の髪に触れた。
もう、君の金色の瞳は私を映しはしないのだね、エドワード…
不思議と涙さえ流れなかった。
先日、エドワードが私に会いに来た。
東部に旅に出ると私に告げ、『あいしている』と………。
この腕の中で俯き、微かな声で、しかし、はっきりと…エドワードは初めて自分の気持ちを私に伝えてくれ…
私は、うれしくて…
嬉しくて嬉しくて嬉しくて………
もう二度と離しはしないと……………
そう言った私に―
エドワードは淋しげに微笑み…
『死ぬ時は会いに来てやるよ』
するりと…静かに…………
金は私の手から……
―――溢れ落ちた…………。
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