やっぱり君が好き
2.
少尉と別れて、一人、とぼとぼと歩く。
いったい、何処に?
ふいに立ち止まり空を見上げた。
オレの気持とは裏腹に何処までも、何処までも、澄みきった青空。
「……ロ…イ………」
愛しい人を呼ぶ。
…頬に一筋の温かいモノがみるみる冷める感触に身震いした。
「…ロイ……ィ!」
堰を切って溢れた感情を押さえられなくて、地面に突っ伏し、身体中の水分が瞳に集まってくるような感覚に身を任せた。
一頻り泣くと、少し頭がスッキリしてきた。
本当は…判ってるんだ…。
この見合いは、ロイの夢を叶える、チャンスだって事。
オレが…、ロイの邪魔をしちゃ…いけないんだ。
上に行くためにどんなに耐えて来たか、どれ程の事を諦めて来たか、ロイをずっと見てたオレは知ってる。
だから………。
「ロイ…、話があんだけど…ちょっといいか?」
「エドワード?」
オレの重々しい雰囲気に気付いたのか、ロイは顔を歪める。
…ちゃんと…ロイの眼を視て…
「ロイ、…別れてくんない?」
………?
「なっ…?」
「なにがあった?」
そんな顔で、オレを見んなよ…。
…いや、これで良いんだ
こっぴどく…残酷に……欠片さえ残らないように……
………叩き割れ………!!!!
「あんたと付き合えば、もうちょっとマシな情報寄越すかと思ったけど……!」
「エドワ……!!!」
ロイの手が、オレの感覚の無い方の腕を掴んだが、構わず言い放つ。
「やっぱ…、あんた無能だわ」
「…本気なのか?」
「本気だ」
「私は…愛している!!!」
ズキッと…胸が軋む。
「オレはあんたが嫌いだよ」
「エドワード!!…いったい何があった!?」
「…あんたのその自信満々で、キザったらしいとこがムシズが走るんだよっ!」
「……私は信じんぞ…!!」
ロイの綺麗な瞳がオレを射抜く。
「……勝手にしろ……」
ロイの手を振り払うと、執務室を出た。
ごめんな…………
ロイは、こうしないとオレを捨てないだろ?
あんたは、こんなとこで燻ってるような人間じゃない……
さあ、あんたの足枷はもう無いよ
……あの高みへ……
この国の頂点に立つあんたをオレに見せて
――――大佐――――
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