*短編集*
□体温
└ロイエド/甘デート
体温
ロイと二人。車で遠出したホテル迄の帰り道。
車はいつもは曲がらない道を左折した。
「道、間違ってねぇ?」
助手席のエドワードが不思議そうに訊ねても、ロイは素知らぬ顔で車を走らせ続けた。
窓を流れる風景が段々寂しいくなり、もう外灯すら見えなくなってくる。
「何処行く気だよ?」
再度訊ねると、ロイは、時間、もう少し良いだろう?と、訊ね返してきた。
「別に構わねぇけど……、アンタ明日仕事だろ?」
まだ、時間は20時過ぎ。しかし、今、自分の宿泊先はロイが住む中央から車で二時間半以上掛かる。
今から帰ったとて、ロイが家に着くのは23時近くなってしまう。
「一日くらい寝不足でも支障は無い。日頃鍛えられてるからね」
そう言ってロイは微笑み、エドは溜息を吐いた。
「あんまり無理すんなよな」
史上最年少国家錬金術師も恋人には弱い。
ロイの望むままにしたかった。否、エド自身、ロイと同じ気持ちでいた。
お互い、次いつ逢えるか解らない間柄。帰り際は切なくなって口数が減ってしまうから。少しでも長く居られるのは嬉しかった。
やがて、車は公園の駐車場に停まった。
その場所は暗くて、車のエンジンを切ると何の音も聴こえない程静かだ。
差し出された手に、エドは素直に手を重ねた。
それだけで堪らなく嬉しくなってしまうから。
俯いたエドの額に口付けを落とす。
ゆっくりと柔らかな唇にロイの唇が触れる。
フレンチなキスをして二人、クスッと小さく笑い合う。幸せな一時。
ロイの腕がエドの躰を包み込む。
口には出せないけど、好きだよ。
エドは想いを籠め、ロイの肩に手を回す。ロイの腕に力が入る。
言葉よりも、体温が気持ちを伝えてくれる。こうしている時、一番幸せを感じられた。
ぶっちゃけ行為よりハグの方が幸せを感じるし、愛されてる気がする。
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