ツナガリ
9
ロイの家へと走る。
もっと、もっと速く……。
家までの距離がもどかしくてしょうがない。
オレ、ちゃんと解ったから…
ごめん…‥‥!
‥‥…ごめん!!
―…‥ロイ…!!
「‥‥―――ロイっ!!
―――!!?」
ロイの部屋のドアを開けた瞬間、オレの眼に飛込んで来たのは………ベッドで、ロイの上に覆い被さる中尉の姿……―――
「エドワードくん!?」
慌てた様子の中尉。
「―――……ロイ……?」
「――待って……!」
走り出そうとしたオレの腕に掴み掛り、必死に止める中尉。
「離せっ!!」
中尉を引き剥がそうと、懸命にもがく。
―――ガチャ!
「―――待ちなさいって言ってるのが解らないの―――?」
こめかみに無機質な冷たい物を押し当てられた。中尉の……愛銃……。
――――ゴリッ…
「落ち着いたかしら―――?」
低い、ドスの効いた声に、オレはコクコクと頷いた。
頷くしかなかった………。
其を確認すると、中尉は漸く銃が下ろして、ホッとしたかの様な、吐息を洩らした。
ホッとしたのはオレの方だ…
「誤解よ…。私はエドワードくんが想像しているような事、断じてしていないわ」
「それじゃあ……!」
反論しようとすると、中尉にギロリと睨みつけられ、たじろいでしまった。
「私をそんな無節操な女だとでも?」
「あ……いや……」
慌ててブンブンと首を横に振る。果たして、この人に太刀打ち出来る人はいるんだろうか?
「大佐が廊下で眠り込んでらしたから、ベッドに運んだだけよ」
ちらっとロイの方に視線を動かすと、確かに眠っていた。
「じゃあ…、後はよろしくね」
「え…? 中尉は…?」
中尉はロイの事―――
中尉は、淋しそうな笑顔を浮かべる。
「……エドワードくんが居てくれたら喜ぶから」
「…中尉……」
―――中尉は‥‥‥?
「大佐の幸せが、私の幸せなの……」
よろしくね。中尉は、もう一度、オレにそう言った。
「でも、またこんな事があったら……」
一度、言葉を切った中尉。オレはゴクッと喉を鳴らし、次の言葉を待った。
「…次は容赦しないわよ?」
中尉は笑っていた
……あの、テーブルの涙
中尉の大佐を想う気持ちの深さをオレは知ってる
「中尉…!オレ、もう迷わないから!」
中尉の背中に誓った。
愛する事は、楽しい事ばかりじゃない、痛みを伴い、迷い、時に、大切な事が見えなくなって、周りも、愛する人ですら……、いろんなモノを傷付けてしまうけど……。
ロイと一緒に居たい。
一緒に歩んで行きたいんだ。
支えになりたい。
――――離れたくない……
中尉は、振り返らず、真っ直ぐに歩いていく。
自分の信念を貫き、どんな時も前を見て、歩いている。
ロイが目覚めたら
愛している 、と伝えよう
ごめんな…………
.
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