ツナガリ
7
「兄さん?」
アルの声がした気がして、顔を上げると……、アルの黒い手が眼前をチラチラと横切っていた。
「どうしたのさ? こんなとこでボーとして…」
「―……アル…」
正気が吸い取られたかの様な感覚で、其だけ言うのがやっとだった。
「…ホークアイ中尉と……何かあった?」
…………何か……?
アルが…心配そうに覗き込む。
「中尉…何も言わずに何処かへ行っちゃったんだ…」
…そ………うか……―――
ロイのトコに………
「ハっ―…、―……アハハハハハハ!!」
――――そう思った瞬間、何故か笑いが込上げてきて、一人顔を覆い爆笑するオレは、酷く滑稽だっただろう………。
「―――!! 兄さん!?」
アルの怪訝そうな声が聞こえてきた。
―――………ハッ‥!
泣くもんか……‥!!
顔を覆い‥…腹がよじれるかと思う程………笑う。
「――‥…兄さん‥‥。」
アルは其だけ…、オレは……スッポリとアルの胸に収まった。
止めようのない涙を、アルが隠してくれたから……‥‥
中尉みたいに愛せたら……
ロイの様に自分に実直なら…
アルの様に包み込む優しさがあれば…………
あれば―――?
―――…失わずに済んだ?
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