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ツナガリ

「兄さん?」

 アルの声がした気がして、顔を上げると……、アルの黒い手が眼前をチラチラと横切っていた。

「どうしたのさ? こんなとこでボーとして…」

「―……アル…」

 正気が吸い取られたかの様な感覚で、其だけ言うのがやっとだった。

「…ホークアイ中尉と……何かあった?」

 …………何か……?
 アルが…心配そうに覗き込む。

「中尉…何も言わずに何処かへ行っちゃったんだ…」


 …そ………うか……―――
 ロイのトコに………


「ハっ―…、―……アハハハハハハ!!」

 ――――そう思った瞬間、何故か笑いが込上げてきて、一人顔を覆い爆笑するオレは、酷く滑稽だっただろう………。

「―――!! 兄さん!?」

 アルの怪訝そうな声が聞こえてきた。


 ―――………ハッ‥!
 泣くもんか……‥!!

 顔を覆い‥…腹がよじれるかと思う程………笑う。



「――‥…兄さん‥‥。」



 アルは其だけ…、オレは……スッポリとアルの胸に収まった。

 止めようのない涙を、アルが隠してくれたから……‥‥






 中尉みたいに愛せたら……

 ロイの様に自分に実直なら…

 アルの様に包み込む優しさがあれば…………



 あれば―――?





 ―――…失わずに済んだ?






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