ツナガリ
5
翌朝、オレは、司令部へと足を運んだ。本当は行きたくなかった、何よりロイに会うのが怖かった。
「おはようございます!」
アルの存在が、今日ほどありがたいと思う日はないだろう。
「あら? 今日旅に出るんじゃなかった?」
中尉………。
「兄さんが、通行証受け取るの忘れちゃったから取りに来たんです」
ね? 兄さん? 後ろを振り返り、アルに隠れる様にしている、情けないオレに声を掛けた。
兄さんはおっちょこちょいなんだから…。溜め息混じりに、続ける弟の言葉を、上の空で聞いていた。
「大佐 昨日来なかったかしら? 昨日、直接届けるって持って帰ったのよ」
「え?」
ホークアイ中尉の言葉に耳を疑った。
今回の旅の目的は、西の重要機密施設への偵察。通行証が無ければ入れない為、行く意味がない。
どうしても、通行証が無くてはいけないのだ。会いたくはなかったが、会うしかない事態。
「……大佐は?」
この時間ならもう出勤している筈だ。大佐の名を出すと、中尉は深い溜め息を吐いた。
「ちょっと良いかしら?」
そう言うと、中尉は俺たちの横をすり抜け廊下を歩き出す。
重い足取りで歩き出したオレ、付いて行こうと動き出すアル。
「アルフォンスくんはちょっと待っていてね」
中尉はアルを止めた。
オレに用があるらしい。いったいなんだっていうんだろう?
アルを残し、先に進む中尉を追う。此処は……ロイの指令室……。
「大佐は今日は休みよ」
ドアの前で、オレの気持ちを見透かしているかの様に中尉は言った。
「その事で…話が聞きたいの」
さぁ、入って。ドアを開け、固まっているオレを促した。
その事で……?
その事っていったい…?
額に汗が滲み、それをコートの袖口で拭うと、壊れたカラクリ人形の様に、オレは部屋に入る。
部屋に入り、扉を閉めると、通い慣れたこの部屋が、まるで拷問部屋の様に感じられた。
中尉はソファーに座ると、ドアの所で立ち尽くしているオレに、対面するソファーに座るように、則す。
「…私も人のプライベートには口を挟みたくないのだけれど……」
そう前置きすると、中尉はゆっくりと話始めた。やっぱり、大佐との関係がバレてたんだ……!
握った拳に力が入る。
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