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ツナガリ


 翌朝、オレは、司令部へと足を運んだ。本当は行きたくなかった、何よりロイに会うのが怖かった。

「おはようございます!」

 アルの存在が、今日ほどありがたいと思う日はないだろう。

「あら? 今日旅に出るんじゃなかった?」

 中尉………。

「兄さんが、通行証受け取るの忘れちゃったから取りに来たんです」

 ね? 兄さん? 後ろを振り返り、アルに隠れる様にしている、情けないオレに声を掛けた。
 兄さんはおっちょこちょいなんだから…。溜め息混じりに、続ける弟の言葉を、上の空で聞いていた。

「大佐 昨日来なかったかしら? 昨日、直接届けるって持って帰ったのよ」

「え?」

 ホークアイ中尉の言葉に耳を疑った。
 今回の旅の目的は、西の重要機密施設への偵察。通行証が無ければ入れない為、行く意味がない。
 どうしても、通行証が無くてはいけないのだ。会いたくはなかったが、会うしかない事態。

「……大佐は?」

 この時間ならもう出勤している筈だ。大佐の名を出すと、中尉は深い溜め息を吐いた。

「ちょっと良いかしら?」

 そう言うと、中尉は俺たちの横をすり抜け廊下を歩き出す。
 重い足取りで歩き出したオレ、付いて行こうと動き出すアル。

「アルフォンスくんはちょっと待っていてね」

 中尉はアルを止めた。
 オレに用があるらしい。いったいなんだっていうんだろう?

 アルを残し、先に進む中尉を追う。此処は……ロイの指令室……。

「大佐は今日は休みよ」

 ドアの前で、オレの気持ちを見透かしているかの様に中尉は言った。

「その事で…話が聞きたいの」

 さぁ、入って。ドアを開け、固まっているオレを促した。

 その事で……?
 その事っていったい…?

 額に汗が滲み、それをコートの袖口で拭うと、壊れたカラクリ人形の様に、オレは部屋に入る。

 部屋に入り、扉を閉めると、通い慣れたこの部屋が、まるで拷問部屋の様に感じられた。

 中尉はソファーに座ると、ドアの所で立ち尽くしているオレに、対面するソファーに座るように、則す。

「…私も人のプライベートには口を挟みたくないのだけれど……」

 そう前置きすると、中尉はゆっくりと話始めた。やっぱり、大佐との関係がバレてたんだ……!
 握った拳に力が入る。







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あきゅろす。
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