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878.雨の向こう側で
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 一先ず、私は一度家に帰る事にした。あのままエドワードを一人家に置いておく訳にもいかない。
 家路を辿る間中、自然と溜め息が洩れる。

 酷く憂鬱だった。

 あの子の世話をするのが堪らなく億劫だと感じる。

 絵を駄目にされた事も子供のやった事だ。あの子は態とやったのではない事も理解出来る。

 だが……、笑って許せる程、失った物は小さくなかった。

 私は人生を賭けた戦いに不戦敗を言い渡されたのだ。

 これが運命というヤツか?
 神は、私に絵を諦めろと宣告したのだろうか?



 家に着き、いつもより重い扉を開くと、ふわりと良い香りが漂って来た。
 この匂いは……?
 不審に思い、キッチンへと向かう足取りが速くなった。

「エドワード……何をしてるんだ?」
「……! おかえりなさ……」
「何をしているのかと訊いてるんだ」

 自分の声の冷たさに、我ながら驚いた。
 エドワードの瞳が揺れ動く。

「あ……オレ――」

 何かを伝えようと口を開いた彼の言葉を待たず、怒鳴った。

「一人で火を使うなんて危ないだろうっ!?」

 ピシャリと発せられた私の言葉にビクッと小さな身体を縮まらせる。


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