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878.雨の向こう側で
11

 朝起きたら、ロイは居なくて、テーブルに朝ごはんと手紙があった。

『昼には戻る』

 たった一行の手紙。ホッと胸を撫で下ろした。
 少なくとも昼まではここに居られる。

 一人でロイが作ってくれた目玉焼きとサラダを食べる。
 ちゃんと食器を洗い、布巾で拭いて元の場所に片付けると、昨日取り上げられた読みかけの本をソファで読む。
 戦争の本。
 写真がのってて、……あ。“ストリートチルドレン”
 ……親を亡くして……、家を無くし路上で暮らす子供たち……。
 ……オレとはちょっと違う。
 ……オレは……。


 ぱたんっ。
 そこまで読んで本を閉じ、本棚にかえす。
 なんだかイヤになって読むのをやめたけど、今度は暇を持て余す。
 何かおもしろいことないかなぁ? 一通りダイニングを見て回ると、次の部屋へ向かう。

 ロイの絵のある部屋。

 しばらく眺めていたら、昨日はキレイだと思った絵がどんどん変な絵に見えてきた。
 ううん、別にヘタだとは思わない。
 でもなんか……?

 次にいろんな色が染み込んだ木の板や、絵の具のチューブを手に取ってみた。
 ……このナイフみたいなの……なんだろう?
 上にしてみたり、下から見てみたり、いろんなところからマジマジと見る。

 太陽の光が反射して……――眩しくて目を閉じた。

 ――……ザスッ!!

 なにかが裂ける鋭い音がして目を開けた。

「――あっ!?」

 どうしよう……! 絵が……!
 目を閉じた時手が緩んで、ナイフが、絵に刺さっていた。

 オレは焦ったけど……、どうする事もできない。
 どうしよう どうしよう どうしょう……その言葉がグルグル頭を駆け巡る。
 壊した物がなおらないことは、オレにもわかる……。


 ――がちゃっ!
 ――……!!
 突然の物音に体がビクッと跳ねる。ロ……ロイ!?
 心臓が口から飛び出そうになる。

「エドワード……? 居るか?」

 逃げ出したい気持ちと裏腹に体はピクリとも動かなくて……。
 そうしてる間にもロイの足音は近くなる。
 慌てて刺してあるナイフを隠した。………そんなことしてもバレるに決まってるっ!!
 わかってる!……わかってるけど!そうする事しか出来なかった。

「エドワード? 居ないのか?」

 追い出されるっ!!

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あきゅろす。
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