505.オールスター!?E.E.争奪戦!
きゅう
「どうしたの?」
固まっているエドワードを不思議そうにして覘き込むグレイシア。
「…や…、ちょっと急用を思い出して………」
ひどろもどろに言い訳すると、そのまま素早く旋回し、走り出す。
―――いや、正確には走り出そうとした……だ。
ガシッとグレイシアに首ねっこを掴まれ動けなかったのだ。
突然の出来事に、目を丸くして振り返ると、さっきまでのにこやかな婦人は、そこには居なかった。
「グ…グレイシアさん?」
エドワードは引き攣った笑いを向けるのが、やっとだった。
グレイシアは、母親のような厳しい顔付きのまま、咎めるように言い放った。
「兄弟喧嘩ですって? アルフォンスくんがしょんぼりしてて、可哀想で見てられなかったわ。
男の子なんだから、逃げずに仲直りしなさい!」
―――……?
グレイシアの言葉に一瞬時が止まる。
兄弟喧嘩!? 確に兄弟喧嘩はしたが、あの後のアルフォンスはとても愉しそうにしていた。
可哀想で…? 見てられなかった……だぁ?!
「兄さん! 来てたの?」
奥の部屋から、エリシアを抱き抱え大きな鎧の弟が出てきて、玄関先で、グレイシアに捕まっているエドワードに、弾む声で話し掛けてきた。
エリシアは新しい来客に、嬉しそうな笑顔を浮かべ、アルフォンスの肩から下りると、母の方に駆けてくる。
グレイシアはこの男のどこに、可哀想オーラを感じとったと言うのだろうか?
「……………」
その瞬間、アルフォンスの腹黒さとグレイシアの誤解に合点を見出した。
ふつふつとエドワードの怒りが沸点に達しようとしていた。
「―…のっ! アルフォンス!! てめぇーー!!」
怒りに任せ、両手を合わせ輪を作る。
エドワードのその行動に慌てて制止に入るアルフォンス。
「わっ!? 兄さん、ちょっと!!?」
…だが、時既に遅し。
エドワードの両手は床を衝いていた。
蒼白い錬成反応が起きる。
その蒼が大蛇のように、フローリングの廊下を這い、アルフォンスへと突き進む。
――がしゃんっ!!
「うわあぁあ!?」
その途端、アルフォンスの巨体が床に沈んだ。
「暫くそうしてろっ!!」
エドワードは捨て台詞をひとつ吐くと、そのままヒューズ家を後にした。
ぽかんとしてエドワードを見送るグレイシア。
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