505.オールスター!?E.E.争奪戦!
じゅうに
しかし、それではラストから逃れる事は不可能だ。
更にもう一度、エドワードは手を打ち付けた。
今度は、その手を壁に立掛けてあった鉄パイプに当て、鋼鉄のワイヤーを錬成した。
ワイヤーは、ガリガリと音をたて、ラストの体に巻き付いてゆく。
十字架に張り付けにされたキリストのように、ワイヤーは壁にめり込み、確りと拘束されてしまったラスト。
「おみごト!」
ひとり平和に手叩きなんぞを、エドワードに送るリン。
そのお気楽さに、エドワードはがっくりと肩を落とす。
「お前なぁ………」
「まア、無事に済んだんだからいいじゃなイ」
ホントこいつ、只のアホなんだか、とぼけてんだか判んねぇヤツ。エドワードは、リンに飽きれつつそんな事を考える。
「随分やってくれるじゃない! 坊や……!」
壁に張り付けにされたラストの体は元通りの姿になり、悔しそうに睨んでいた。
けれど、抵抗する様子もなく、リンはホッとしたのか、エドワードに聞こえるような大きな溜め息を吐いた。
「確か、『私達』って言ったよな?」
そういうと辺りを見回すエドワード。特別、誰かが居る気配はなかった。
「上だヨ」
普段は見せない真面目な顔で、頭上を指す。
リンの指に導かれるように壁伝いに視線を動かす。
「誰も居ないじゃん?」
そこに在るのは、古びて所々塗装が剥げた壁、くすんだ赤い色の屋根、相変わらず晴れわたる空。
「エドワードには、あの禍禍しい気配が判らないのカ…」
「気配…?」
首を傾げるエドワード。
リンは、少し考えた後、ランファンとフーを呼んだ。
二人は直ぐに駆け付け、リンの後ろで、頭を垂らす。
「行けるカ?」
二人を見ずにリンは尋ねた。
「はイ」
ひとつ頷くと、二人は直ぐ姿を消した。
あの二人は、付き人と言うより隠密のようだった。
「おい、二人で大丈夫なのか?」
心配になったエドワードはリンに聞いた。
「心配ないサ。あの二人は簡単にはやられなイ」
そう言ったリンの表情は穏やかだった。二人を信頼しているのだろう。そんな表情だ。
「あら、そんな大口叩いて大丈夫なのかしら?」
クスクスと楽しそうな笑いを洩らす。
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