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雨宿りしませんか?
こいわずらい(カカサス現代パロ)@
・カカシ視点


    ☆☆☆☆


「オレ絶対お前の方が先に結婚すると思ってたなー」


アイスコーヒーをストローで掻き交ぜながら、長年の親友は言った。


「だってさ、オレなんかより遥かにお前の方がモテてたじゃん?彼女とかも先に出来てたしさ。
今だってより取り見取りなんじゃねーの?」
「あー…多分向いてないんだよ、結婚とか」
「そんなもんか?」
「そんなもんだよ。
俺はオビトとリンは結婚すると思ってたよ」
「マジで!?」



嬉しそうに身を乗り出す姿に、こちらまで笑顔になる。
俺とオビト、リンは小学校からずっと同じ学校で、いわゆる幼なじみというヤツだった。

紆余曲折あったけれど、幸せな2人を俺は心底祝福している。


「結婚式には絶対来てくれよな!
一番前に席用意しとくからさ!」
「一番前って…お前それ家族席じゃないの?」
「いーじゃねーか。
先生とカカシは特別だからさ、やっぱり」
「……そう。
でもやっぱり遠慮しとくよ」
「なんでだよ!祝ってくれよ!」
「御祝儀だけは弾んでやるから」
「嫌味か!」
「人が集まる所苦手なんだよ」
「いくらなんでも今回ばかりは来て貰うぜ!
来なかったら、先生に罰ゲーム考えて貰うからな」
「な…!それは卑怯だ…」

先生の罰ゲームといえば、苛酷な上にメンタルにくる必ず人に"参った"と言わせるゲームだ。
あんな温厚な人からどうやったらそんな事が出て来るのか、被害に合わなかった俺達は恐れ戦いた。


「というわけでコレ招待状な、絶対来いよ!」
「ああもう」


そんな話をした一ヶ月後、結婚式当日に俺の携帯電話が鳴り響いた。

そこで俺の運命が変わるなんて誰が予想出来たろう。




    ****



大きなターミナル駅の中、俺は必死に人を探していた。
会った事もなければ見た事もないその姿を逃さない様に、辺りに目をやる。

今朝方、かかってきたオビトからの電話は驚いた物だった。


『いとこが田舎から来るんだけど、俺迎えに行けないから行ってやってくれ!』


何処から突っ込んだものか困り果てた。
結婚式当日に迎えに行けると思っていたオビトにビックリするよもう…。
しかも、それを垢の他人に迎えに行かせるなんて…向こうも困るだろうに。
オビトはかなり一方的に相手の特徴だけを俺に伝えて、慌ただしく電話を切った。
アイツ何時か倍返しでお礼させてやるからな!

そう決意しながら俺は特徴を思い出す。

歳は14、黒髪って…特徴になるのかこれ。

まだ残暑の残る秋だ。大きい駅なだけあって人でごった返しているから少し蒸し暑い。冠婚葬祭のスーツなんて来て来るんじゃなかったよもう。


その時だった、少しだけ服の裾を引っ張られた気がした。

何かに引っ掛かったのだろうか?

いつもだったら多分振り返らない。だけど、今着てるのは仕立てたスーツな訳で、引っ掛けて破けたらまた仕立てに行くのが面倒臭い…。

そう思って振り返った。

そこには引っ掛かかる様な物ではなくて黒い頭があった。
それに続いて見えたのはいやに色が白くて、全てにおいて整った顔。
小さいけれど筋の通った鼻に、薄くて形の良い唇。
真っ直ぐに見上げる目は大きくて、そのくせ射抜く様に強い力があった。


「あんた、はたけさんか…?」


一瞬見とれた強気なその目から、打って変わった少し頼りなげな発言のギャップに俺は着いていけない。

口も開けない位の飲み込まれる衝動に支配されそうになった。


「あ、うん、そう…だけど。
君は…?」
「うちはオビトのいとこ」

そう言われて見れば、14位だし髪も黒い。服は明らかによそ行きのスーツだった。しかしこんな外見だったら他に特徴沢山あるだろ!
あの馬鹿…。


「良かった…見付けられなくて困ってたんだよ。
良かったそっちから見付けてくれて」
「どうせ、14で黒髪位しか言わなかっただろ?
その辺いい加減だからな…あの人」
「そうそうそうなんだよね」
「こっちは結構分かりやすかったぜ。
灰色の髪なんてそうそういないから」


くすり、と小さく笑った様が歳相応で可愛かった。
可愛い…って、
ヤバイよ。

男の子だろう、それにまだ14のガキだぞ…。

でもこの渦巻く気持ちは感じた事の無い位大きいもので。

きっとありきたりな言葉で言えば、一目惚れというヤツだと思った。



「い、行こうか」
「ああ」
「荷物持つよ」
「わりぃな」


とりあえずバレないように、ぎくしゃくしながら行動するので精一杯だった。


    ****


結婚式はそつなく無事に終わった。
俺はといえば、はっきり言って式どころではなかった。
運命の悪戯か、何故か式場の席までそのいとこと隣だった。
結果、緊張しきりで式の内容なんて覚えちゃないし、酒の味も食べ物の味も分からない。
その上、その仕草に見取れてしまったりして。

いい大人がこんなんじゃ恥ずかしいよ、全く…。

でも、そんな事露ほども知らないその子は何かと困れば俺を頼ってきたりで、もう嬉しいやら悲しいやらで思考回路はショート寸前だ。
それでも何とか控室にこの子を届けたら終わりって所まで来た。


「ありがとな!わざわざ来てくれて!」
「痛いよ、子供扱いすんなって」
「俺から見ればまだ子供だっつーの!」


ぐりぐりと遠慮無く撫でられる様を見て多分仲が良かったのだろうと推測出来た。
ご両親兄弟以外で列席していた親類がこの子だけだったし。


「カカシもありがとな。
助かったぜ」
「別にたいしたことないよ」
「それにちゃんと式に来てくれて嬉しかった。
やっぱりお前に見て貰えて、良かったよ」
「何言ってんだか」
「結婚したって俺達は親友だからな!忘れんなよ!」
「はいはい」


変わらないと言うけれどきっとそれは無理だ。
人なんてそんな物だと思う。
別に誰が悪い訳じゃない。
そうなっていくのが正しいのだから。


「ところでさ、この子どうするの?」
「家に泊まりに来るんだよ」
「は?」


多分その場にいた全員がオビトの発言に凍り付いた。結婚式当日に新婚夫婦の家に泊まりに行くなんてこんな拷問あるか。


「馬鹿オビト…」


全員の白い目に堪えられなくなったのは、やはり子供だった。


「俺帰るよ」
「ダメだって!折角だからこっち案内するって言ったろ」
「また今度で良い」
「分かった、今からホテル探すから…」
「いいよ、悪いし…」
「それじゃあ俺の気がすまねーよ!」


慌てて電話を掛けようと部屋の受話器と電話帳を探しはじめた時だった。

「俺、はたけさんちに泊まるから…!」


俺にとんだ火の粉どころか爆弾が投下された。
驚きのあまりに声にならなくてただ呆然としていると、いきなり俺の手を取って勝手に手を繋ぎ出す。


「俺達仲良くなったんだ。そう見えるだろ」
「マジで!?
確かに…手繋いで仲良しそうだな…」
「優しくしてくれたし、きっと泊めてくれるから!」
「そっかそっか。
頼むぜカカシ!」


とうとうぶち切れた思考回路で立ち尽くす中、俺は嬉しそうなオビトにただ背中を叩かれていた。




続く→

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あきゅろす。
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