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なるとこばなし。
Orange Sunshine@
・現代パロ
・学生設定
・"空想少年〜"とは別物です。
・現代パロですが、現実と違う事があるかもしれませんが、無視して下さい(笑)
・トビウオちゃんからの3636リクです。

以上を飲み込めた方からどうぞ。


   ****


1.ラブリーベイベ(ナルト)


あっつい夏の日だった。
夏休みに入る前のそわそわした空気で、俺はバイト先に入った。


春からバイトが出来る歳になり、遊ぶ金欲しさにファミレスでバイトを始めた。
思ったよりずっと楽しい職場で、友達も沢山出来たし。


そんな所に、新人が入って来た。



「今日からキッチンに入る、うちはサスケくん。僕の知り合いから頼まれてね。
だからちゃんと面倒見てあげてね」


夜空みたいな黒髪に、
誂えた様な真っ黒い目。
完璧だろう位に整った顔。

全てを覆う真っ白い肌。

別時限の俳優でも見てるみたいだった。
ぽかんと口を開けた俺を店長は一瞥して、咳ばらいをする。


「聞いてる?ナルト」
「き、聞いてるってばよ!でも、店長…」
「何?」
「俺ホールだろ?
何でキッチンのヤツ教えなきゃいけねぇの?」


ぶーたれた俺に、店長はため息をついた。


「キミがホールになったの一週間前からだろう?
その前はキッチンだったんだから、教えられるだろ?」


今日はキッチン他一人しか入ってないから回らないんだよ。
と、追加された。

しょうがねぇ。
俺が一肌脱いでやっか!
俺は新人に笑いかけて、手を差し出した。


「俺、うずまきナルト!
分かんねぇ事あったら俺に聞けってばよ!」
「………」


新人はそんな俺の手をじっと見たきり、だんまりを決め込んだ。

どうしたんだと、思った矢先ヤツの口から零れたのはとんでもない言葉だった。


「店長、コイツじゃあ嫌です」



   ****


「あれ?ナルト、お前ホール担当になったんじゃなかったか?」


今日のキッチンは同期のシカマルだった。


「そうなんだけどさぁ〜…」


ちらっと横目で新人を見遣った。
辺りを物珍しいそうに見渡して、今は黙って俺の後に付いて来ている。

さっき開口一番に口にした、ヤツの失礼極まりない一言で俺達はいきなりケンカするハメになった。

あわや殴り合い一歩手前で、店長が止まりに入り事無きを得たんだ。

店長のアレは、
殆ど脅しだってばよ…

お互い罰として、コイツの研修期間中は俺が付きっきりになる事になった。

最悪だ…。
ホント。


「あ?誰だコイツ」
「新人」
「………」


シカマルをじっと見た新人は、少し間を置いて口を開いた。


「うちはサスケです。
よろしく」


とくに愛想が良い訳では無いけれど、ぺこりと頭を下げる。

な…!

何だよその態度!
俺ん時と全然違うんですケド!


「お、よろしく」


軽い挨拶もそこそこに、シカマルは入ったオーダーを受けた。
俺達から離れていったのを見て、俺は新人を睨んだ。


「てめぇ、俺の時とは随分態度が違うじゃねぇか」


ジロリと更に睨みを利かせれば、ヤツは鼻で俺を笑う。


「アイツは、どっかの誰かさんと違って頭悪くなさそうだからな」


頭のどっかで、試合開始のゴングがなった気がした。



   ****


新人は腹が立つが、仕事は完璧だった。
教えた事はすぐに覚えたし、要領も物凄く良い。逆に分からない事は素直に聞いて来た。


後半、俺はやる事が無くて、ぼんやりとその仕事ぶりを眺めるだけだった。

マジ黙ってれば、色男なのに。

はぁと短くため息をついた時だった。


「ナルト」
「んあ…、何だってばよ店長」
「そろそろ、9時だからサスケ君帰すから送って行ってあげて」


「「はぁっ…!?」」


思わず声が揃っちまった。


「何でだってばよ!??」
「俺、一人で帰れます!」

大声を上げた俺達に、店長はため息をついた。


「実は、ちゃんと寮まで送る様に言われてるんだよ」


寮!?
何それ聞いてないってばよ!
絶句した俺に対して新人はなおも食い下がる。


「でも、大丈夫です!
一人で帰れます!」
「僕もそうしたい所なんだけど、担任の先生に言われたんだよ」


そのフレーズにピタリと新人が止まった。
エプロンを握りしめて俯いてしまう。


「そういう訳だから。
あ、ナルトもそのまま上がって良いよ」


そう言って店長はキッチンのフォローに向かった。
俺は仕方ないから立ち上がって、ロッカーに向かう。
新人を呼ぼうとして、不意に見た顔は、
悔しさで歪んでいた。



   ****


私服に着替えた俺は、
自慢の愛車、と言っても自転車を用意しながら、新人を待った。

そうして、さっきの顔の意味を考える。


どうしてあんなに悔しそうな顔したんだろ。

なんで…?

気になったら、放っておけない質だ。
色々考えてる内に、アイツがやってきた。


「別に…送らなくていい」
「るせぇなぁ。頼まれたのは俺なの!
分かったらさっさと乗れ」


自転車に跨がった俺は、後ろの荷台に乗るように促す。
しばらく惑った後、後輪に重みを感じて乗ったのだと分かった。


「ところで、何処の寮に行きゃあ良いんだってばよ?」
「そんな事も知らなかったのかよ」


ため息をつかれて、ムッとした俺の耳元でアイツはこの辺りでも有名な私立校の名前を口にした。
そこは完全寮制。
だが、そんなに厳し過ぎない校風。
偏差値は高すぎて良く分かんねぇが、俺らの学校なんて足元にも及ばない。


「すげぇ」
「…ちっとも凄くなんかねぇよ」


早く出せ、と軽く踝を蹴飛ばされた。
夜道を風を切りながら走ると心地いい。鼻を擽る匂いが僅かに夏を帯びている。

俺達はあれきり口を聞かなかった。

聞きたい事は山ほどあったケド
まだ詮索するには時間もなにもかもが足りなくて
俺は馬鹿みたいに緊張していた。
コイツの事が繊細な何かに思えたんだ。

ファミレスから約10分。
学校の反対側にその寮はあった。
歴史の教科書にでも出て来そうな古めかしい洋館。
もう門がしまっていて、誰かが入るのを拒んでいるみたいだった。

新人は軽い足どりで自転車から下りると、俺に背を向けて歩き出す。

オイオイ!
礼とかねぇのかよ!

そんな俺の心の叫びが聞こえたのか、ヤツは振り返った。


「ありがとうな」


そう言った言葉と一緒に付いて来た笑顔は

初めてで
とびっきりで


俺は雷に打たれたみたいに、しばらくそこから動けなくなった。




→続く

☆☆☆☆

店長はヤマト隊長。

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