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なるとこばなし。
たぶんそれは君を回る(カカシ先生視点)
ある任務の無い日。
たまには外でゆっくりしようと、森に入った。

森林浴とかいうでしょ?
高い高い木の上、なるたけ自然と一体化する様にだらりとする。

すると、こんな森の奥に誰かやってきた。

草葉を踏みやって来たのは、サスケだ。
まさか休みの日にまで、同じ場所に来ちゃうなんてね。

奇遇といえば奇遇。


もちろんサスケは俺になんて気が付かず、忍具を取り出して構える。
どうやら修業するみたいだね。

感心、感心。


そんな俺は気が付いたら休むのも忘れて、サスケの修業を見ていた。

何度も投げられるクナイや手裏剣は思った様には行かず、的から外れた場所へと当たる。


残念。


でも、サスケは諦めない。

何度も何度も何度も、
それを繰り返し続ける。

微妙な角度の違いで、クナイは外れた。
ほんの少しのタイミングのズレで的から外れる。

あとちょっと、腕の角度がねぇ…。

地を蹴る伸びた足や、
すらっと動く腕、

よじった肩や腰のタイミングも

全部ズレてるのよ。


って…、俺変なヤツみたいじゃないか?
いやいや、これはアドバイス。上官としてのアドバイスだから。


本人には伝わりませんが……。



一人で悶々としていた時、着地したサスケがバランスを崩し地面に吸い込まれた。


「……あっ!」


思わず馬鹿みたいに声を上げて、駆け付けそうになったケド、俺は止まった。
サスケが練習していたすぐ脇の草むらから飛び出て来たヤツがいたから。

「サスケっ!」


そいつはキラキラと金髪を靡かせて、サスケに駆け寄る。

ナルトだった。

ナルトはサスケを助け起こすと、体中怪我が無いかと確認する。



っーか…、お前も修業しなさいよ。


「あ!」


とナルトは短い声を上げると、サスケの膝に視線を止めた。こっからじゃよく分からないけど、擦りむいてる様だ。


「サスケ!怪我してる!」
「うるせぇなぁ、擦りむいただけだ。
怪我の内には入らねぇよ」

そう言ってナルトを除けた。
俺もサスケに賛成。ちっちゃい子供じゃないんだしねぇ。


「でも…」
「でもじゃねぇよ、修業の邪魔だ。
どっか行ってろ」


邪険にあしらうサスケにナルトは頬を膨らませる。

「いやだ。サスケがまた怪我したら大変だってばよ」
「だから…!」


そう、サスケが言葉を紡ごうとした時だった。
ナルトがいきなりサスケを抱きしめる。
傍目から見ても分かる位にそれは強かった。


「俺、サスケが怪我するのはいやだ。
でも強くなる為なら仕方ないってばよ。
だからせめて、
傷付いたら直ぐに治してあげたい」
「………」


驚いて身じろぎしなかったサスケはやがて、答えるる様に両手を背中に回した。
その手でナルトの背中を軽く叩いて慰める。


「しょうがねぇな、お前は」
「うん…」


なんだか、甘い雰囲気にこっちが当てられそうなんですけど…。
喧嘩ばっかりの2人がこんなに甘いなんてね。

全く、色々心配してきて損したよ。

でも、いざと言うときは2人共お互いを信頼してるからな。

きっとそれはお互いを大切に思うが故に来る信頼なんだ。


しばらく、そうしていた2人はやがて体を離す。

「ところで、お前治すって救急箱でも持って来たのか?」
「あ」
「……ウスラトンカチが」

溜め息を零したサスケにナルトは待ってて!と絶叫して走り去っていった。
そんなナルトをしばらく見送っていたサスケは不意に立ち上がり、忍具を拾い上げるとそれを放り投げた。


「うわっ!」


俺の方に…。

ギリギリでかわしたケド、頭の真横に刺さったクナイに驚きで体が硬直する。


「覗きとは良い度胸してやがるな、カカシ」


バレてるー!


「どっから見てたのか知らねぇが、
丸出しだぜ、気配」


はぁと溜め息を付いた俺は、サスケの元へ降りて行った。


「あのねぇ、お前が後から来たの。
俺の方が先だったんだからね。だから人を覗き魔みたいに言うの止めてくんない?」
「ふん、どうだかな」


物凄く嫌そうな顔をして、サスケは毒づいた。
こっちだって好きで出くわした訳じゃ無いんだからねー!
お前らが勝手に来て勝手にやってたんだからなー!
俺はそんなサスケの足をジッと見た。


「それよりさ」
「何だよ」
「足、大丈夫なの?」
「膝なら平気だ」
「はぁ…」
「何だよ」
「そうじゃなくて、
足、くじいたろ」
「………」


バレて無いと思ったのかね、この子は。
バランス崩した瞬間に、体重の掛かり方がおかしくなったから絶対くじいてる様な気がしたんだよ。


「ま、たいした事無いだろうけど、今日はこの辺にして冷やして休みなさいね」
「……っ」


軽く肩を叩いて立ち去ろうとした。
そこまで空気読めなく無いしね。
ナルトが帰って来たら目一杯、ラブラブしなさい。

なのに、サスケってば。

「ちょっ、…待て…」


俺は少し不思議そうな顔で振り返ると、サスケは何だか言いにくそうに、視線を下げた。


「あ、あのだな」
「あー、言い触らしたりしないから大丈夫だよー」
「そうじゃなくて…」
「ん?」
「………てくれ…」
「何?よく聞こえない」
「肩貸してくれっていったんだよ!」


いきなり大きい声を出すから耳にきた。
鼓膜がビリビリしてるのが良く分かる。


「何でよ…。
大人しくナルトの帰り待ってれば良いじゃない」
「それは…!」


火が付いた様にサスケは顔を赤くする。

これはちょっと楽しいかも…。


「アイツに助けられるなんて…正直、嫌なんだよ。ドベでウスラトンカチなアイツには助けられたら、恥だ」


すっかり失念してたけどこの子は、恋愛どうの以前に男の子なんだよね。
そりゃあ、
ライバルでもあるナルトに助けられるなんて借り作る様な真似出来ないよな。

しかも、サスケはプライドが人一倍高いし。


でもさ


「俺に借り作るのは良いの?」
「う…!
あ、アンタは大人だから良いんだよ!
大人は黙って手を貸せっ!」


うわっ!逆ギレだよー。
酷いなー。

でも仕方ないから手を貸してあげるよ。

ひょいと軽いサスケの体を持ち上げた。



お姫様抱っこで。


「テメェ!
何しやがんだ!」
「だって手を貸せって言ったろ」


じたばたする手足を見て思わず笑ってしまった。
からかうのは楽しい。

サスケは真面目だから、冗談を真に受けがちだ。

「そう言う意味じゃねぇよ!
肩を貸せって意味でだなぁっ」
「はいはい。
全く、ふざけがいの無い子だね」


一回降ろしてやると、ホッとしたのか短く息が吐かれた。

が、また固まって動かなくなる。


「……は?
アンタ何のつもりだ?」
「背負ってくよ」
「だからなぁ…!」
「分かってるよ、でも変に足使って両方使えなくなったら事だろ?」
「……う」


しばらく考えていたサスケは、渋々と言う様に俺の肩に手を掛けた。


「しょうがねぇな…。
アンタが言うなら…」
「大丈夫、ナルトには全部俺のせいにして良いよ」


だから俺にも、何かさせてなんて、

言えないけれど。

なんだろうか。
昔から庇護欲を誘う子ではあったんだけど。

でも、守ってあげたいけれど、それはきっと、
俺の役目では無くて。

それが出来なくても、
見守って行きたいと思う。

先生だしね。

そうやって俺の想いは、君の周りを回って無くなってしまうと良い。

そんな苦い感傷に浸って俺は笑った。


「何笑ってんだよ、気持ち悪い」
「酷いなぁ」
「一人で笑ってるヤツなんて、気持ち悪いに決まってるだろ」
「確かに。
ほら、しっかり捕まれ。落ちちゃうでしょ」
「あ、ああ」


突然の言葉にサスケは素直に従って、ピッタリくっついた。


ナルトが怒鳴り駆けて来るまで

あと、5分。


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