俺は弟が大嫌い。番外編(過去) 4 急いで門の前に立つ智樹の元へ行く。 「お前、なんでここにっ…」 「兄さんを待ってた」 智樹はそう言い、俺の横に立つ友達を見る。 …睨んでいる気がするのは気のせいだろうか。 見られていることに気付いた友達は、ちわーと挨拶をした。 「なんでだよ、先に帰ってる約束だったろ?」 「帰ったよ」 「え…?」 「一度帰って、もっかいきたの」 智樹はランドセルを持っていない。 確かに一度帰っているようだ。 「兄さんとの約束、守ったよ」 そう言って無邪気に笑う弟。 …家から学校まで、30分はかかる。 つまり、往復で1時間。 俺が授業を受けている間、ずっと歩いていたということだ。 どうしてわざわざそんな大変なことを… 「早く帰ろっ」 そう言って俺の手を引っ張る智樹。 「えっ…でも」 友達をチラリと見る。 目が合うと、「俺はいいから」と言ってくれた。 智樹は人見知りをするのか、俺以外の人を混ぜて帰るのを嫌がる。 だから、俺は友達の優しさに甘えておいた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |