小説:俺は弟が大嫌い。
8
リビングに着くと、母親と、弟もいた。
更に最悪だ…と思いながら通り過ぎようとしたが…
「兄さん」
智樹に手を捕まれた。
「智樹…母さんとこれから大事な話をするところでしょう」
母親にとって大事な事と言ったら、進路に他ならないだろう。
それ以外のことに興味ないんだから。
「わかってるよ…でも、兄さんにも聞いてもらいたくて」
「は?なんで俺が…」
「仕方ないわ…文弥もそこに座りなさい」
母親に指さされたのは、智樹の隣の席。
有無を言わせぬ口調に思わず従う。
「智樹はこの私立の中学でも十分狙えるわ。この学校に行ければ、私の理想としていた進路よりずっといい進路を目指せる…」
パンフレットをめくりながらくどくどと説明をする母親。
相変わらず、自己中心的な言いぐさだな。
弟は嫌いだが、こんなときばかりは同情する。
弟のほうを見ると、少しにやけていた。
…何を考えているんだ?
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