病気×平凡(リクエスト小説)
17
「なんですか、それ」
つい、看護婦さんのところに行ってしまった。
「っ!!陽くんっ…!」
「院長の息子って誰?やっぱり僕の怪我治ってるの?なんで、退院できないの…っ」
看護婦さんにしがみつく。
「ダメ…っごめんなさい、言えないの…!」
必死に看護婦さんが逃げようとする。
「答えてよ!もしかしてお母さんが来ないのもその人のせい?」
「…っ」
看護婦さんが息をのむ。
その無言は肯定の証だと僕でもわかった。
「ねぇ!僕なにかいけないことでもしたの!?家に帰りたいよ!」
ここで看護婦さんを逃がしたら、家に帰るチャンスはもう二度と来ない気がした。
「ごめんなさい、ごめんなさいっ…!」
そんな僕の気持ちも知らずに看護婦さんたちは走り去ってしまった。
取り残された僕は過呼吸寸前になっていた。
なんで、どうして。
その言葉だけが頭の中を駆け巡る。
「よう、どうしたの」
聞き慣れた声が背後からきこえた。
ゆきが、笑顔で僕のことを見ていた。
とても綺麗な笑顔なのに。
それが僕にはとても恐ろしいもののように見えた。
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