小説:生徒会庶務の災難 1 過去 「10分休憩を取ります。次は数学なのでその準備をしておくように。それと、これは宿題です。」 家庭教師は大量のプリントを置いて去っていった。 「うっせーババァ」 俺はポツリと呟いた。 ーコツン。 窓に小石がぶつかってきた。 窓を開けると、爽やかな風が入りこんできた。 俺がいるのは2階。 下を見ると… 「みーずき!やっほー」 「アンナ!」 俺の待ち望んでいた人物が手を振っている。 俺はアンナに梯子を掛けてもらい、窓から出ていく。 「また勉強してたの?」 「うん。なんでこんなことしなきゃいけないんだろう…」 「学校に来れたらいいのにね。そしたらいっつも一緒にいられるし!」 アンナは可愛らしい笑顔を俺に向けてそう言った。 俺は顔が熱くなってきたから急いで下を向く。 「つーかさ、いつもごめん。ふつう、俺がアンナを迎えに行く立場だよな」 男なんだから。 ーなのに、俺は女のアンナより体が弱い。 「気にしてないよ?私、瑞季を迎えに行くの好きだもの。瑞季、私を見ると凄く嬉しそうに笑ってくれるでしょ、それが嬉しいの」 そう言って、アンナは俺の手を握った。 「早く行こっ!あっちにね、すごく綺麗な場所見つけたの!」 俺の手を引いてはや歩きをするアンナ。 …俺は、アンナが好きだ。 孤独だった俺と友達になってくれた唯一の存在。 アンナのおかげで、俺は生きていようと思える。 俺は彼女の小さな手を強く握り返した。 [次へ#] [戻る] |