リクエスト・企画小説
天から降る六花<ヒバ山・願いごと一つ、君へ>
天から降る六花


12月26日。今はもう日付が変わって27日。
閉館時間までたっぷりと館内を楽しんだ雲雀と山本の二人は、場内アナウンスと終了の音楽と共に水族館の外へ出た。時刻はAM3:07、普段なら暖かな布団にくるまって、ぐっすりお休みの時間。
「あー、可愛かったなオオサンショウウオ」
「・・・君って意外とゲテモノ好きだよね」
「なんだよそれ。つか、じゃあ雲雀もゲテモノって事?」
「殴るよ」
「殴ってから言うなよーっ!」
帽子を被っていたって、痛い物は痛い。口よりも先に手が出る(普通の意味でも、そっちの意味でも)彼氏に殴られた頭を撫でながら、山本は空を見上げた。星も見えない黒い空から落ちてくるのは、白く柔らかな氷の結晶。冷たい雪を頬に、額に受けながら、山本はあーん、と口を開ける。
「・・・汚いんじゃないの?」
そんな山本を怪訝そうに見ながら、ボソリと一言。けれど山本はそんなのお構い無しとぱくん、と一つ雪を飲み込んではまた口を開けてぱくん。
「えー?雲雀ちっちゃい時やんなかった?」
「・・・やらないよ」
「へー」


年末年始は父はとても忙しくて、コタツに足を入れる暇も無いほど。冬休みだから当然学校は休みだし、よく遊んでいる商店街の友達たちは、『忙しい時期に他所の御宅にお邪魔したりしちゃいけません』という、自身も商売屋である親からの言いつけを守って誰も遊びに行ったり来たりしない。
一人でテレビを見てたって子供番組ばかりあるわけじゃ無い。おまけに何故か大人のドラマはこの時期はすぺしゃるだなんだって長時間局を独占しているものだから、恋愛なんてまだ興味も何も無い山本にはよくわからないものが多いしで、つまらなくて。
そんな時山本は、商店街を出た住宅街の一角にある公園に一人で来てこうして遊んでいた。寒いからか、親も休みで一緒に家にいる子供が多いからか、公園は人っ子一人いやしない。
雪が美味しいとかそんなんじゃなくて、なんだか雪と遊びに興じているような、雪に遊んでもらっているような気がして、とても楽しかったのだ。


「・・・・変な子。今する必要ないじゃないか」
「なんで?」
「僕がいるから寂しくなんかないし、つまらなくもないでしょ」
ぽんぽん、と帽子に隠れた短髪の頭を優しくたたいて、雲雀が目を細める。
「帰ろうか」
そう言って雲雀は、水族館から出てきた人たちがまだまばらに居残っている舗道を歩き始めた。
普段なら雲雀のバイクにタンデムで来る水族館。朝から降っていた雪に、今日は歩いてここまで来た。並盛町の端にある水族館は、雪道で歩きにくかったのもあって、時計を見たら一時間近くもかかってしまっていたけれど、二人でならあっという間だった。色んなこと話して、笑って、そうしたらすぐに着いてしまった。


寂しくも、つまらなくも無かった。


「おう!」
先を歩く雲雀の背中を追って山本も足を踏み出した。寂しかった想い出を、少しずつ優しくて楽しい物に代えてくれる恋人と、帰り道手を繋ぎたくて。
いいかな?そう聞いてみるために。


でも走って追いついたと思ったら、さっさと右手を取られてしまった。



「遅いよ」


だってさ。




おわり
いや〜本編が長くなって編集しなおしたりで最後の最後で慌てました・・・。これにてクリスマスDear mine終了でございます。皆様も素敵なクリスマスが過ごせますように。
【冬の愛しい】5のお題
 お題配布元starry-tales
アドレス:http://starrytales.web.fc2.com/


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