リクエスト・企画小説
街のイルミネーション 武とハル
街のイルミネーション


「またですよまたですよーーーーっっっ!!!!!」
「まぁまぁハル、獄寺はこの時期どうしたって忙しいんだから仕方ないんだって」
「それも知ってますーーーー!!!」
12月23日、クリスマスイブを目掛けてやって来た獄寺の彼女は、白い頬をぷうと膨らませていた。大学の冬休みを利用しての一週間のイタリア旅行。けれど12月のクリスマスといえば、ボンゴリアン・クリスマスパーティーがあるから、当然のように右腕獄寺はセッティングに大忙しだ。
それでもハルは頑張った。ただ見ているだけでもいいからと健気なまでに。そりゃもちろん合間に二人で食事なんか出来たらいいなぁなんて、僅かながらでも希望に胸を膨らませていたりしたからだろう。
・・・だというのに。実際は傍にいたところで迷惑そうにあっちへ行けとぱっぱと手を振られるだけ。もちろん本心からではないと分かってはいるけれど、分かっていたって寂しい。だってクリスマスなのに。恋人達にとっては一番盛り上がるはずのクリスマスなのに!!


「ふぇ〜ん、もう別れてやる〜!!!」
「まぁそう言わずに、ほらこのスフレチーズケーキも美味いぞー」
街中のきらびやかなイルミネーションを背景に、クリスマスの飾りつけも目に眩しい店内で、いつもと同じようにパクパクケーキに八つ当たりしているハルに、ケーキサーバーでケーキを皿に乗せつつ、よしよしと撫でて慰める。これも毎年の事となれば山本の手つきも慣れたものだ。
ちょっと涙目になっているハル。折角のクリスマスを恋人と過ごしたいという可愛らしい女心も確かに応援してやりたいのだが、いかんせん自分が右腕であるということに物凄くプライドを持っている獄寺に、俺たちに任せてデートして来いと言ったところで素直に聞き入れるわけが無い。
とはいえ、皆が心浮かれている中に一人涙を流させているなんて。
『可哀想だから山本なんとかしてやってね』と綱吉にまで耳打ちされては、こりゃどんな手を使ってでも何とかしなきゃ男がすたるってものだろう。
「ごめんなハル、俺や笹川兄がもっとしっかりしてりゃ、獄寺一人が頑張らなくてもいいんだけどな」
頬杖付いて山本は眉根を下げて申し訳無さそうに笑う。
「え!?い、いいんです別に、山本さん達のせいじゃありませんよっ。どうせあの人のことだから意地になってるんでしょう」
「いや、でもさ・・あいつがしっかりしてるから、どうしても俺たち頼りきっちまうんだよなぁ」
「そ・・そうなんですか?」
「そうそう。あ、24日ハルも来るといいぜ!毎年すげーんだ獄寺のおかげで!!」
「は・・はいっ!!」
彼氏を褒められて満更でもないらしいハルは、チーズスフレをフォークでひと掬いして頬を染める。―――ここまで来れば後一押し。
「24・25は無理でも、26・27は蹴ってでもボンゴレから締め出してやるから、ゆっくり楽しむといい。イタリアのクリスマスは長いんだからさ」
「は・・・・はいっ!」
「それまでは俺が獄寺の代わりな?」
「え・・」
そこでにっこり笑う山本に勝てる女の子がいるわけが無い。


山本のエスコートでする冬のミラノ観光は格別だったらしい。獄寺が携帯に送られてきたメールを開くと、ライトアップされたガレリアで、笑顔の二人が眩く光り輝く大きなツリーの前仲良さそうに腕を組む写メが―――。
「・・あんのやろう・・!」
自分よりも彼氏らしい顔をしてハルの隣でピースサインを画面に送る山本に、コイツよりももっとスペシャルなサプライズを・・・!!と図らずも考えてしまう獄寺だった。




【冬の愛しい】5のお題
 お題配布元starry-tales
アドレス:http://starrytales.web.fc2.com/


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