リクエスト・企画小説
花束にはカードを添えて
 花束にはカードを添えて


5人が帰った後キッチンに食べ終わった食器類を運んでいた山本は、鼻腔をくすぐる仄かな香りに引かれて、その香りの居場所を突き止めんとキッチンを出た。
キッチンと隣接しているリビングを抜け、廊下に出て階段を軽やかに駆け上がると二人の寝室のドアに手を掛ける。
「あ・・・・」
深いグリーンのベッドカバーの上に一枝、小さなオレンジ色の花がぱらぱらと咲いていた。同じように気付いたらしいザンザスが、いつの間にか背後に佇んでいた。ベッドの上にある細い枝を、山本の肩に手を置き取り上げる。
「金木犀・・・アンタの誕生花だ」
「ふん」
祝われて嬉しいような歳では無いし、プレゼントなどする方もされる方もテレが入るからと、ヴァリアー内で誕生日に祝いの品などは随分とご無沙汰ではあったのだが。
たった一枝の金木犀から落ちたらしい花粉のついたカードには、ご丁寧にルッスーリアの唇が押し当てられている。

『いつまでも気高いひと』

「なんだそりゃ、プライドがたけぇとでも言いてえのか」
「あはは、その通りだよな、いつまでたっても気位が高くて気難しくて」
「そうでもねぇだろ」
「俺にはな」
ポンと放られたカードは、それでもゴミ箱行きは免れて、きちんと本棚の上に落ちた。

いつまでも気高いひと

そんな貴方にいつまでも着いて行きます

きっとそんな想いが込められているに違いない、そしてザンザスもそれを感じ取っている。
山本はふわりと目を細め、ザンザスの背中から抱きついた。自分の仲間たちとはまた違う彼らの絆を、ほんの少し羨ましいなと思いながら。



おまけ

「ちなみになぁ、俺も本当は花でもプレゼントしようかなーって思ったんだけど」
背中に張り付いていた山本がザンザスの前に回りこみ僅か下方から薄茶の瞳で覗き込む。
「ザンザスさ、俺の誕生日にプロポーズしてくれただろ?花持って。で、俺も探したわけよ」
だけど、と山本はハァと一度ため息をついて。
「アンタの誕生日って食べモンばっかなんだもん、メロンにナスに・・・ついでにマツタケってなんなんだよ!?こっちじゃマツタケなんてどうやったって手にはいらねーっつーの!」
「俺のせいじゃねぇだろ・・・」
ザンザスがごちるとニマリ、と猫のように笑う。
「だからメロンでシャーベットをつくったのなー」
あいつらに見つからないようにするの大変だったけど、これはアンタに食べて欲しかったんだと言う山本はするりとザンザスの腕を抜け出ると、そのまま手首を掴んでキッチンへと走り出す。
「焦らなくとも逃げやしねえだろ」
「早く食べさせてえの!」
「オマエが?」
「そ、俺が」
「じゃあ急ぐか」
「あっはは!おう急げ!」


そうして誰もいなくなった後のリビングのソファで、山本とザンザスがシャーベットを食べさせあいながらイチャコラしていた所を、やっぱり俺だけでもボスにプレゼントを・・・!と懐に小さな包みを忍ばせて引き返してきたレヴィが先刻割られた窓ガラスの向こうからしっかり目撃してしまって、翌日ショックで仕事に出てこなかったとか何とか・・・。




           


 花束にはカードを添えて・・・お題配布元:Noina Title



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あきゅろす。
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