リクエスト・企画小説
おまけ
山本&女の子's   おまけ


京子の懇願に負けて、6月にそれは執り行われることになった。日本とは違い梅雨など無いものの、4月〜6月はこちらイタリアでも天気模様が替わりやすいので、広い庭を開放してのパーティーはいかがな物だろうと思われたのだが。


穏やかで爽やかな太陽の光が燦々と降る中、つつがなく式は終焉を迎え、残すはブーケトスのみ。
招かれた客人の、特に女性達はそれを受け取る為に我先にと京子の周りへ近づいた。
「あははは、すげーな女子パワー」
「女だけじゃねぇぞぉ」
斜め後ろでワイン片手にチーズを摘まんでいるスクアーロがしゃくってみせる顎の先を見れば、頭一つ分抜きん出たあれは、まさしく暗殺部隊で素手での戦いを得意とするサングラス姿のごつい男の影・・・。
「ルッス・・・一体誰と結婚?」
決まった奴いたんだっけ?と隣を見上げれば、仏頂面を更に歪ませているかの暗殺集団の首領殿。彼はここに来るのを随分と渋っていた。そう、それはもう綱吉と京子の結婚が決まった半年も前から。
「ほーらーザンザスー、おめでたい席なんだから笑わないまでもせめて眉間の皺一本減らしとけー」
なんて言いながらぐりぐり己の眉間を指でこね回す恋人の頭を、ザンザスは大きな手でべしんと叩いた。
「いーたーいー」
「るせぇこの酔っ払い」
「酔っ払ってねーもん。ほら、まだこんだけしか飲んでない」
にこやかにテーブルクロスを捲り上げた山本の足元、そこに転がる空瓶の山に、ザンザスの肩がガクリと落ちる。
「・・・誰だこいつにこんなに飲ませたの・・!!」
山本武25歳、酒は飲むたび呑まれまくりのこの男、ワイン・日本酒・ビールおおよそどんな酒でも大好きなのだが、いかんせんそれほど強いとはいえない。それでもって酒癖があんまり、良くないのだ。
冗談ではない、こんなクソ面白くも何とも無い式に仕方なく居てやったというのに、帰ってからベッドの中で説教三昧なんて考えただけでもうんざりする。ザンザスは酔いに任せて自分ばかりすこぶる良い気持ちになっている山本の腕を引っ掴んで、さっさと退散させてもらおうと芝生の上脚を一歩踏み出した。
ところが。
「あーーーーーっっ!!」
「そっち行っちゃだめぇーーーっっ!!」
「うっそーーーっっ!!」
ぽすん、と音がして、振り返ったザンザスの目線の僅か先には。

薄赤い顔をして、でっかいリボンの付いた真っ白な花束をぽーっと見つめている山本武25歳。

「たーけーしー・・・」
じりり、とルッスーリア他その他大勢の女どもが凄い形相でこちらににじり寄ってくる。その余りのおどろおどろしさに、さしもの暗黒の王ザンザスも山本を片腕で抱きかかえつつ、後ずさり。
「・・な・・なんだルッス」
「ボス・・それは女の子の夢よ・・さっさと渡してちょうだい」
「こ、こんなもんがか」
「そうよっっ!!早くっっ!!」
鬼気迫る表情で叫ばれて、このままでは本当にこの身が危険かもしれない、さすがにこんな場所で殺人を犯しては不味かろうと、ブーケを山本の手から取り上げようとした―――のだが。
「やだ」
「ああ!?」
「俺がもらったんだから、これはおーれーのー!」
「ちょっ・・・武こら離せ」
「やーだーだめなのなー」
ザンザスが引き剥がそうとする腕ごとブーケを抱え込む。酔っ払いの力とはかくも凄き物かとザンザスも舌を巻いて。
「ええいっ、仕方ねぇ!!おいサメっっ!その女共暫く抑えとけっっ!!」
「え・・ええっっ!?お、俺かぁぁ!?」
叫び、いきなり山本を肩に担ぎ上げるとザンザスは長い脚で走り出した。
「エーーーーッッ!!」
「ちょっと、どきなさいよ」
「うわ、足踏むなぁぁぁ!!!」
「何でアンタが幸せ持って逃げんのよ武ーーーっっ!!」
背後から怒声罵声を浴びせられながら、ザンザスは表に止めてある車に向かいひた走った。
「うははは、皆すっげえ怒ってる〜」
これまた呑気な酔っ払いは、肩の上から向こうの様子を見てぺちぺち手まで叩いている。
「ったく、世話のやける・・・!!」
目の端に映るヒラヒラ舞う白く長いリボン。本当はこんな物、無理矢理にでも山本の手から取り上げて投げつけてやっても良かったのだけれど。
『これは俺の』
そう言って白い花束をきつく抱きしめていた山本。それがどうも酔っ払いの冗談ではないような、そんな気がしてしまったものだから。
「大概俺もオマエに甘いよな」
ザンザスは一人ごちると、担ぎ上げていた山本を助手席に押し込み、運転席に回りこんで誰からも邪魔されないように即座に鍵を掛ける。
「・・・はり?」
「おら酔っ払い。幸せにしてやんぜ、よ〜く味わえよ」
「おー?」
何だかよく分かっていない山本に向かいにやりと笑ったザンザスは、ブーケを抱きしめたままの酔っ払いに覆いかぶさった。



おわり。
ツナさんと京子ちゃんの結婚式〜でした。

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あきゅろす。
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