リクエスト・企画小説
京子 後編
「・・・・こんなところで・・・」
「呑気なもんだな」
ボンゴレとヴァリアーの両当主は、どちらとも無くため息をついた。目の前から突然逃げ出したお互いの想い人を探している最中ばったりと出くわして、お互い『何でこっちに来るんだ』と思いながらの捜索中、別な場所を探そうにも、自分達だけに備わっていると言われる超直感が『こっちだ』と告げていた。


暖かいとは言いがたい、どちらかと言えば突き刺すような日差しを浴びながら、2人は草むらに寝転んですうすう寝息を立てている。ついでに言うなら山本が京子を腕枕している、そんな状態。
「珍しいね、妬かないの?」
「・・くだらねぇ。犬がじゃれ疲れてくっついて寝ちまっただけだろうが」
「人の恋人捕まえて犬とか言わないでください!」
何だかあんまりな形容の仕方に憤慨した綱吉の足元に転がる山本と京子の髪が、山から吹き降す風になびく。
「・・・山本は、不安なんですよ。雲雀さんをあんな風に失ってしまったから・・・。それに貴方は、あまり自分の気持ちを言わない人だし」
穏やかな表情で寄り添い眠る二人を微笑ましそうに見つめて、綱吉は言った。大切な、気持ちの名前は違えど大切な2人。誰よりも幸せになって欲しい友人、そして―――。
「女に言い募られて曖昧な笑いしか浮かべられないジャッポーネよりゃマシだと思うがな」
「大事な人に心配掛けたくないだけです」
「守りきれる自信が無いだけだろ」
相変らずああ言えばこう言うザンザスにむっとしつつ、綱吉が言い返そうと口を開きかけたその先で、男は長身を折り曲げると山本の頭をパカリと殴った。
「いでっっ!」
「おら、起きろ!俺は時間が無ぇんだ」
(な、なんつー乱暴な。仮にも恋人なんだろーっ)
「・・んぅー・・」
目を擦りながら先程の穏やかな寝顔を心なしむすっとさせて、山本が起き上がる。その山本の頭をザンザスは引っ掴むとぐいと肩口に押し付けた。
「うわわ・・なに!?」
慌てた山本が声を上げるけれど、押し付けられてそれはもごもごとしか聴こえずに。
「口で言わなきゃ分からない馬鹿に一度だけ言ってやるから耳の穴かっぽじってよく聞きやがれ。いいか、腹ぶち抜かれても脚の一本無くなっても、例え体半分無くなってたって―――俺はお前んとこに戻って来る」
「え・・・」
暴れていた山本が急に大人しくなった。振り上げようとしていた手が、ゆっくり下がってザンザスの黒い上着を掴む。
「お前だってそうだろう?どんだけ傷だらけになっても、死にそうな目にあっても、最終的に帰ってくるのは俺んとこだけだって思ってるだろうが。俺はお前がそう考えてるのを知ってる。好きだとか、んなもん言われなくたって、ちゃんと分かってんだよ」
「ザンザ・・・ス・・」
「だから心配なんてすんな。屍を晒すのはお互いの腕の中って分かってりゃ、どんなになったって死に物狂いで帰ってくる―――ここに。そん位の気持ちでいるんだって事、よく覚えとけ」
少しだけ2人の間に隙間を作ったザンザスが、山本の胸をトンと拳骨で押した。どこか茫然とした表情で目の前の男を見つめていた山本は、突然ぎゅうっと目を瞑ったかと思うと、もう一度ザンザスの黒い上着に抱きついた。
「・・・ごめん」
「んっとになぁ。こちとら小一時間でやる事やっちまおうと思って足運んだってのによ。本当、面倒くせぇ野郎だぜ」
「・・・今から」
「残念だがあと3分で出立だ」
帰ってから覚えとけよ。そう言って、申し訳無さそうに笑う山本の目尻に口付ける暗黒の首領を見ていた綱吉は、しっかり聞き耳を立てているであろう京子の目許を一応手で覆った。
「玄関まで、一緒に行く」
小さな子供のようなしぐさでザンザスの上着の裾をつかむ山本を、面白そうに見ながら足元で未だ狸寝入りを決め込んでいる恋人に囁く。
「・・・俺もう少し自分に自信がつくまで、一人で頑張ってみたいんだ。それで、自分で大丈夫だって思えるようになったら、必ず迎えに行くから」

その時は何があっても絶対ついてきて欲しい。

京子の目許を押さえていた綱吉の掌に、濡れた感触。不器用に微笑んでくれた桜色の唇に、綱吉は初めて触れた。



ザンザス33×山本23くらいで。眠れる森設定です。ツナさんはまだまだ当主としての自信が無くて京子ちゃんに告白すら出来ずにいたわけですね。でもさりげなくプロポーズしちゃいましたよ・・!!ついでに初チューまで!!(^^)
さてこれにて武&女の子's終わりです。少しでも楽しんでいただけたならうれしい事この上ないです。読んでくださった皆様、どうもありがとうございました。



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