リクエスト・企画小説
ビアンキ
カツリ、と石畳に響くヒールの音。その後ろから刀を携えた長身の男が影のように付き従っていた。
ターゲットのアジトはすぐ目の前だ。ビアンキはいつもより少しだけ早い心臓の鼓動を抑えるように、静かに深呼吸を一つ。
「大丈夫だぜビアンキ、アンタはちゃんと俺が守るから」
背後の男が不敵に笑うのが分かる。振り返らなくたって。
「貴方に守ってもらう謂われは無いわ」
冷たくあしらっても、きっとまた楽しそうに目を細めているに違いない。その余裕綽々な顔が、私は昔から好きじゃないのに。
「そうだな、アンタは黙って守られてくれるような女じゃねえしな」
そう言いながらも長い腕は男の武器である燕模様の刀の柄を既に軽く握っており、いつ何があっても大丈夫と言う体勢だ。


ボンゴレの領地である北イタリアで、最近誘拐事件が横行していた。女性ばかりを狙った誘拐団は規模はさほど大きくないらしく、だからこそ中々尻尾が掴めずにいたのだが、先日山本の顔見知りの情報屋が色々つてを辿って何かを掴んだらしい。
『アジトを突き止めた。多分だがな。どうする?情報買うかい?』
持ちかけられ、ガセではないのを確認し、奴らがアジトを引き払ってしまわないうちに手を打つ事になった。十代目である綱吉は女を使うのはあまり気が進まないようだったが、その方が向こうも油断するだろうという事で、仕事に慣れているビアンキが選ばれた。


(大丈夫よ、だって私には彼が付いているのだから)
ターゲットの潜む屋敷の大きな窓がよく見えるホテルの一室に、ライフル銃を構えてきつい煙草を燻らしているはずの腕利きの殺し屋を想えば、自然と笑みが零れる。
「行くわ」
「OK」
あの人と一緒に仕事が出来る、それがどんなに私にとって幸せな事か、私の後ろの男は分かってはいない。いいえ、分かっていても、知らない振りをする。そうするのが自分の義務だとでもいうように。
いいの、それでも私は本当に幸せなのよ。


例えそれが私を守る為だけのものでは無いと、分かっていたとしても―――。



おわり
山←リボーン←ビアンキという構図はうちでは当たり前・・・。ごめんねビアンキ、でも大好きなんだよー。

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