リクエスト・企画小説
ザン山&ヒバ山編
   <ザン山編>

 さし出されたのは小さな花弁が重なり合いこじんまりと集まった赤い花。丸っこい黄緑の葉の中ほどに滲む深緑色の模様が面白くてじっと見つめていると、早く受け取れとばかりに手首を取られその花を押し付けられた。
「・・・どうしたんだこれ」
 昨日すでに誕生日は祝ってもらったというのに、でも誕生日以外で花を貰うような理由もないし・・・。
「わからん。ほんとにあいつの考えていることはわからねぇ!」
半ばイラつきながら吐き捨てるように言うザンザスを花に顔を寄せつつ上目遣いに凝視する。あいつというのが一体誰の事なのか分らないけれど、どうやらその『アイツ』に言われてこの花を俺にくれる気になったらしい。
「ふーん・・・まぁいいや、ありがとな大事にする!」
ザンザスに礼の言葉を口にした後、手の中の赤い花の茎を大事そうに両の大きな掌で包み込んで、何となく香りを嗅いでみたりして。
「んじゃ俺行くわ。流石に二日は休めねぇ」
おとついの夜から訪れていたヴァリアー邸、本日の朝ごはんまで入り浸り、さてボンゴレに出勤するかとザンザスの部屋を後にしようとした山本は、ドアを開けた途端、背後から近づいてきた足音の主にいきなり抱きしめられ、驚きに手にしていたゼラニウムを落としそうになった。
「あの」
「君ありて、幸福」
「・・・・・は?」
ザンザスの低く深みのある声で耳元に囁かれるのは苦手だと言っているのに、二人の身長差ではどうしてもそうなってしまう。吹き込まれる響くバリトンに僅か頬を染め振り返れば、自分の少し上に見える顔も何となく紅潮しているように見え。
「ルッスーリアがな、この花の花言葉だと。ったく、何考えているんだか」
「・・・・・んなの、言って照れるなら言うなよ・・」
「・・るせ」
上目遣いの山本を見下ろしながらも、なんとも視線が定まらないザンザスと二人向かい合ったまま立ち尽くす。


『君ありて 幸福』


 ああもう

くそ、なんだこれ

 参ったな


 プロポーズしてる(されてる)みたいじゃねーか。



   END


  <ヒバ山編>

 山本が久々の出張からやっと解放され、報告書を持って意気揚々とボンゴレ邸のドアを開けようと手を伸ばすと、まだ触れてもいないというのにいきなりそのドアが内側に開いて、やり場を失った右手と共に山本は広いホールへとつんのめった。
「いてて・・・なんだよ俺がいない間に自動ドアになっちまったのか〜?」
自他共に運動神経は良い山本、すっ転んだりはしなかったが、床に着いた手に報告書を握り締めていた物だったから、拳骨にしていた指がホールの絨毯に擦れて赤くなってしまった。
「そんな訳ないでしょ」
くっくと咽喉を鳴らす音に振り仰げば、すぐ目の前に楽しそうに細められた雲の守護者の涼しげな目許。
「雲雀!」
「おかえり。大分かかったね」
「おう。けどなんとか話はまとめてきたぜ」
自分は絨毯にべったりと腰を降ろしたまま報告書を持たぬ左手を上げて、雲雀のこちらも左手の拳骨を合わせる。
「おかげで誕生日にはまにあわなかったけど」
へらりと笑って下ろそうとした山本の手を、けれどそのまま雲雀は絡め取った。
「雲雀?」
「ほんとにね。こんな所であげるなんて本意ではないんだけど、今度は僕の方に仕事が入っちゃってもう出なきゃならないんだ」
山本の手を捉えたまま、きっちり着込んだスーツのポケットからビロードで包まれた紫色の小箱を取り出すと、更に片手で器用にその箱を開けて何かを取り出す。
「君の誕生石がこれでちょうど良かったよ」
左手の薬指にまるであつらえたように馴染むそれ―――。
「・・ちょっと雲雀さん?・・・あのこれって、まさか」
「ダイヤだよ」
「やっぱりーーーーっっ!?」
宝石だの貴金属の類には全く興味の無い山本でも唯一知っているその光り輝く石は、綱吉のお供で赴く先で、どこぞのボスの指だのその愛人の首元だのにきらきらとまばゆく自己主張しているものではないか。
「い、いくら誕生日プレゼントっつったってこんなん受け取れねーだろーっ!」
一所懸命外そうとするけれど余りにもピッタリすぎで、焦れば焦るほど血液がそこに集中し、締め付けがきつくなっていく気がする。
「あわわ抜けねえー!」
そんなことをしているうちに雲の守護者はしれっとした顔でさっさとドアを開け、外で待っている草壁が運転手を務める大きな車に乗り込もうとしていた。
「ひ、雲雀〜っ!」
開け放たれたドアの前、情けない声を出しながらも慌ててその背中に向かって手を伸ばせば。
「言っとくけど誕生日プレゼントじゃないよ」
振り返った雲雀のここぞとばかりのまぶしい笑顔。
「は?」
じゃあ何だと首を傾げれば。
「結婚指輪だからそれ。ちなみに給料3か月分」
「へ・・・・」
まだ理解できていない山本を他所に、雲雀が車に乗り込むと、黒い車は静かにボンゴレ邸を後にして行ってしまった。


「きゅうりょう・・・3ヶ月分て・・」
 自分と雲雀の給料なんてそう大差無いはず、ということは・・・。山本は指折り数えていくうちに血の気が引いていくのが分かった。
「・・えーーーーーーーーっっっ!!!!!」


 その額を想像すると後の結婚生活が一体どんな物になってしまうのか考えただけでも恐ろしくて、綱吉に是非とも長期の出張を申し出ようと報告書を握り締める山本だった。



  END


 ザン山、ヒバ山プロポーズでした(笑)雲雀はもうここらで決めておかなきゃまずいだろ的に有無を言わさず!って感じが。逆にボスはここまで一緒にいたんだから今更なとこをあいつ=ルッスーリアに背中を押されて、みたいな。
 武誕生日おめでとう。本誌で少しでも貴方に幸せな結末が用意されている事を祈って止みません。頑張る男の子の努力が報われる未来でありますように。
 4月24日の花はゼラニウムのほか、オレンジやムレスズメ(笑)というのもありました。ゼラニウムの花言葉「君ありて幸福」の他、「愛情」「決意」「慰め」「真の友情」ってのもあって、こっちの方が武らしいですよね。ゼラニウムの花大きすぎたかも・・。同じ生まれの方に哀川翔さんもいますよ・・・!!しかし誕生石がダイヤモンドとは・・羨ましい・・!!

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あきゅろす。
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