リクエスト・企画小説
親友編
 四時間目終了のチャイムが鳴るとすぐ、暖かくなったし久しぶりに屋上で食べようかという珍しい沢田綱吉からの提案に、自称右腕獄寺は勿論の事、綱吉の机に弁当を置いて椅子を取りに行った山本も振り返り弁当を机の上から取り上げた。
「いいな、ツナそれ!」
「あ、でも山本は先行って場所とっておいてくれない?天気がいいから同じ事考えてる人が大勢いると悪いし」
ドアに手をかけ早速屋上に行こうとしていた山本を制した綱吉は、そう言い残して、いつものように購買でパンを買う獄寺と共に教室を出て行ってしまった。
「・・・ほんじゃ、さっさと行って日当たりのいい場所取っておくかな」
階段を降りて行ってしまった二人の背中を見送った山本は、階段を見上げ最上階まで一気に駆け上がり、屋上のドアをカラカラと開ける。
「なんだ、誰もいねーや」
 春の温かな日差しに温まったコンクリートの上腰を降ろす。さっきは同じ事考えてる奴いっぱいいるかもなと思ったが、春の風はじっと座っている分にはまだ寒いと踏んだのか、制服姿など一つも見えなかった。すぐ側にある給水タンクの影に手を入れてみると、やはり日陰は涼しく・・というより結構冷たい。
(あったかいとこで食べた方がいいよな)
どうせ誰もいないのだから、二人が来てから場所を選んでも全然大丈夫だとは思うけれど、とにかく山本はうららかな陽射しの中で弁当の包みを広げる事にした。
 今日は山本の15回目の誕生日だ。朝からプレゼントを貰ったりおめでとうの言葉を貰ったりして嬉しかったけれど、山本としてはこうして親友と呼べる友達を持てた事、その関係が続いている事の方が実は何倍も嬉しかった。15年間生きてきた中で、文字通り生死を共にしたかけがえの無い友達。いつまでも一緒って訳には行かないのかもしれないけれど、ずっと親友でいられたらいいなと、願って止まない。
 程なくして先程自分が開けたドアをくぐってその大切な親友達が顔を出した。
「ごめんね山本遅くなっちゃって」
「いいや、あったかくって俺もぼ〜っとしてたから」
「ほらね、大丈夫だったでしょ10代目」
山本と輪になるように腰掛けて、獄寺はサンドイッチを、綱吉は母手作りの弁当をそれぞれ紐解き、いただきまーすと口に運ぶ。そこではたと山本は獄寺のサンドイッチの袋が購買の白いナイロンではない事に気が付いた。
「あれ?なんだ獄寺わざわざコンビニ行ってきたのか?」
山本がコンビニの名前入りの袋を目線で指摘すれば、獄寺からチッと舌打ちが聞こえたような気がして首を傾げる。
「・・・てめぇは・・」
「んー?」
忌々しそうに山本を見つめ、綱吉に顔を向けた獄寺は、綱吉が仕方無さそうに笑って頷くのを確認してから、こんなときばっか目ざとい奴だぜと呟いて袋をガサガサ探り、そうして取り出されたのはなんと、山本愛飲の『牛乳inゼリー』。
「え、まさかこれ買いに?」
「おう!そのまさかだ!!」
どんと胸に突きつけられた牛乳inゼリーは学校近くのコンビニでは売っておらず、実は並盛商店街の個人経営のコンビニエンスストアに行かなければ無い物で。
「わざわざ買いに行ってくれたのか?」
「おう!10代目がてめぇにどうしても買ってやりたいとおっしゃってな!!ありがたく飲みやがれ!!」
山本の胸元に押し付けられた牛乳inゼリーは、獄寺の手につぶされんばかりにきつく握り締められていて、まだ開けてもいないというのに噴出しそうにパンパンになって見える。
「獄寺くん・・・」
あのさ何で君がそんなに偉そうに山本に渡してんの?俺目線でこっちに寄越せって言ったつもりだったんだよね、ついでに言うならそれ金出したのも俺なんだけど―――まるで小言弾でも撃たれたようにブツブツ呟く綱吉と、10代目にプレゼントを貰えるなんてと心底羨ましがっている獄寺の首に、嬉しさで感極まった山本は弁当そっちのけで抱きついて獄寺に殴られた。



 
 やっぱこの3人でしょう。3人揃った所が大好きです

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あきゅろす。
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