リクエスト・企画小説
ザンザス編
 山本に慰めるようなキスをして、ザンザスは部屋を出て行った。何だろう特にプレゼントをせがんだ記憶は無いけれど、あの記憶力のいい男のことだから、自分がポロリと漏らした何かをしっかりと覚えていたのかもしれない。山本はザンザスがその手に何を持ってきてくれるのか、ドキドキしながら扉の開くのを待った。


「Buon compleanno」
そうしてザンザスが山本の目の前に差し出したものは
「えー、覚えててくれたのか?」
真っ赤な苺が白い生クリームの上を所狭しとせめぎあうホールケーキは、もちろん甘さを抑えた山本仕様だろう。真ん中には『21』の数字の蝋燭に小さな火が灯っている。


 以前『小さい頃から誕生日のケーキはホールのやつを親父が買ってくれたんだけど、胃袋も小さいから全部は食べ切れなくてさ。ちょっと大きくなってこれなら全部食べられるぞって頃には甘いものが苦手になっちまってたんだよなー。あー、一度でいいからホールケーキ一人で全部食いてーっ』とザンザスの前でケーキ屋のショウウィンドを見ながら言った事を、彼は覚えていてくれたのだ。


「自分の為にホールケーキ作るのはむなしいとかぼやいてたからな。これなら食べられるだろう」
フォークを差し出す大きな手を見つめて、へへと頬を染めながら「grazie」と小さく呟く山本に目を細めて、ザンザスはもういちど祝いの言葉を唇にのせてキスをした。



 と、それが21歳の誕生日。以来毎年この日はザンザスお手製のホールケーキを山本は食している。他のプレゼントは欲しくないのかと聞かれても山本は首を横に振った。



 だって、あのザンザスが、自分ひとりのためにわざわざ朝からケーキを焼いてくれるんだぜ?こんな幸せな日ってないんじゃね?




 食い物でごまかした・・・!!いやいや、手作りだもん心こもってますよ〜(笑)

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