リクエスト・企画小説
雲雀編
 誕生日のプレゼントは何が良いかと聞いたら、君があんまりかわいい事を言う物だから思わず「いいよ」と言ってしまったけれど、考えてみたらこんな風に誰かと写真を撮るなんていうのは初めてのことで。


「ひばりー、ほら早く早く!!」
ゲームセンターなんて風紀を乱すような所は、本来ならば僕の来るべき場所ではないんだけど。
「いい?ほらここカメラだから、ちゃんと見ろよ!」
グイと雲雀の横っ面を、何度も肉刺を潰して硬くなった山本の掌が画面に映るように押しやる。
「痛いってば!」
「あはは、ごめんごめん」
怒られても楽しそうな顔を見ていたら、風紀委員だとかそんなことにこだわっている自分が何となく馬鹿馬鹿しくなってきた。


「プレゼント?」
4月24日の山本の誕生日、忙しい学校生活を送る二人、多分その日に祝ってあげる事はできないからと、雲雀は取り敢えずプレゼントだけ先に上げたいのだという旨を話した。
「そんなのいいのに、あ、でも俺いつでもいいからひばりと会って話せる時間持てると嬉しい」
そう、こうして話しているとはいえ、これは電波と言う見えないラインで繋がっているとても頼り無い時間。会って、君の顔を、君の目を、君の全てを感じることが出来ない時間は凄くもどかしい。とは言うものの、部活で忙しい山本と、入ったばかりの並盛高校で自分という存在を誇示し立場を確立するのに忙しい雲雀には到底そんな時間を持つことが難しく、だからこそのこの電話であり・・・・。
「ねぇ、じゃあさ」
そうして、昼間会えない代わりに夜に会う事になって。勿論中学生の山本を遅い時間まで連れ回す事など出来ないし、翌日は学校があるからほんの少しだけのデートだけれど、君はとても嬉しそうにただ「絶対行く!」そう言ってくれたんだった。


 夕ご飯を食べてきたという山本を前にして、雲雀はコンビニで買ったサンドイッチと缶コーヒーを開けていた。ガードレールに腰掛けながら二人並んで他愛の無い話をする。ああ、やっぱり電話なんかじゃ伝わらない。君の嬉しさや、僕の顔を見た途端安心したように和らぐ君の呼吸―――。
 ふと、山本が何かを思いついたような顔をしたので雲雀はその山本の視線の先を振り返る。すると道路の向かい側に燦然と輝くゲームセンターの電光看板があった。


『だって俺達一緒に写ってる写真とか無いじゃん』

 携帯で撮ればいいと言う雲雀に、俺は携帯なんて持ってないもんと、せかせかとプリクラのきらびやかなボックスへと雲雀の背を押して。
「ほら、ひばりせっかく初めて一緒に撮るんだから笑って!」
既にカメラ目線でピースサインを出している山本。僕は風紀委員なんだから、本当はこんな時間こんな所に出入りしている中学生を注意すべき立場なんだけど。



 まあ今日位は、可愛い彼氏の誕生日の願い事を聞いてあげるただの恋人でいようか。



 雲雀は小さい子供が使用する四角い箱を足で引き寄せると、その上に乗って山本の両肩に手を掛けた。
「おっ、上下か。いいぜ」
山本が画面の下に少しだけ身を屈める。

3・2・1


 二人で写ったシールを山本は恥ずかしがって取り上げようとしたけど、僕がそんな事をさせるはずがないだろう?

 勿論僕のケータイに貼られているとも。




 一体誰のためのお祝いなんですか雲雀さん(笑)それよりも山本は何処に貼るんでしょうね、そっちの方が気になります・・(^^)

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あきゅろす。
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